研究課題/領域番号 |
19K05450
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
柳澤 章 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60183117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機化学 / 触媒・化学プロセス / 不斉反応 / アルコキシド / キラル触媒 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、効率的かつ高純度なキラル銀(I)メトキシドの発生法と、それを用いたキラル銀(I)エノラート化合物の調製法について検討した。単純な環状ケトンのエノールエステルを基質に用い、不斉アルドール反応を評価系としてキラルホスフィン-銀(I)トリフラート錯体とメタノールに対して様々な第三級アミンの添加効果の検討を行ったところ、ジイソプロピルエチルアミンが効果的であり、純度の高いキラル銀(I)メトキシドおよびキラル銀(I)エノラートが調製できる事を見出した。 次にこのようにして最適化したキラル銀(I)エノラート発生法を用いて、触媒的不斉アルドール反応の開発を試みた。メタノールの存在下に触媒量のキラルホスフィン-銀(I)トリフラート錯体とジイソプロピルエチルアミンを作用させ、求電子剤としてアルデヒドを加えたところ、目的とするアルドール生成物が収率良く得られた。この結果から、反応系中にメタノールを添加することにより、キラル銀(I)メトキシドとキラル銀(I)エノラートが効率的に再生することがわかった。 当該年度は本研究をさらに先へ進め、開発した触媒的不斉アルドール反応の求電子剤として、ケトン類の一つであるイサチン誘導体を選び、反応の検討を行ったところ、その生成物に高い不斉誘導が生じた。そこで、様々なケトンのエノールエステルとイサチン誘導体との組み合わせを用いて、本反応における基質の一般性を検討した結果、収率およびエナンチオ選択性に関して良い結果を得た。 また、この不斉アルドール反応の反応システムを応用したニトロソアレーン類の不斉N-ニトロソアルドール反応やイサチンイミン類の不斉マンニッヒ型反応の研究にも着手し、良好な結果を得ている。不斉アルドール反応については論文の準備中であり、不斉N-ニトロソアルドール反応及び不斉マンニッヒ型反応については、その予備的成果を学会で発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和元年度で計画していた不斉アルドール反応の検討が順調に推移し、求電子剤にケトン類を用いる反応にまで展開でき、論文発表の準備段階にまで至っているため。さらに不斉N-ニトロソアルドール反応および不斉マンニッヒ型反応については一部の成果を学会で発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度成功したキラル銀(I)メトキシドとキラル銀(I)エノラートの触媒的発生法を、さらに他の不斉反応(αーアミノ化反応、αートリフルオロメチル化反応、プロトン化反応等)に適用していく。また、既に検討を開始しているケトン類の不斉アルドール反応については基質の一般性を含め、実用性の観点からより詳細に検討を行う。さらに前年度に開発したキラル銀(I)触媒システムを使って、ケトンからのキラル銀(I)エノラートの直接的発生が可能かどうかについて検討する。ケトンとキラル銀(I)メトキシドから対応するキラル銀(I)エノラートを効率的に発生させるためには、ケトンのαー水素が十分に酸性である事に加えて、キラル銀(I)メトキシドの塩基性が求められる。しかしながら、エノールエステルを経由しない直接的なキラル銀(I)エノラート発生法は、基質の合成の手間を省ける魅力的な手法であるので、令和2年度から検討を行いたい。まず、エノール化の比較的容易なβージケトンを基質に選び、キラル銀(I)メトキシドを用いてキラル銀(I)エノラートの調製を試みる。
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