研究実績の概要 |
令和3年度は、前年度までに開発した純度の高いキラル銀(I)メトキシドの調製法を使って、イサチンイミン類の触媒的不斉マンニッヒ型反応について詳細な検討を行った。単純なアニリン類とN-メチルイサチンから誘導したイサチンイミンを基質に用い、環状のアルケニルトリフルオロアセテートをエノラート前駆体として反応条件の最適化を試みたところ、光学活性ホスフィン配位子にはTol-BINAP、銀塩にはヘキサフルオロアンチモン酸銀、アミンにはジイソプロピルエチルアミン、アルコールにはメタノールを用いるのが最も効果的であり、生成物の単離収率、ジアステレオ選択性およびエナンチオ選択性の全てにおいて良い結果が得られることがわかった。 一方で、同じく前々年度に研究をスタートさせたニトロソアレーン類の触媒的不斉N-ニトロソアルドール反応については、エノラート前駆体にγ,δ-不飽和-δ-ラクトンを用いる反応について当該年度において研究を進め、興味ある知見を得ている。 また、前年度より検討を継続しているアジド基を持つ超原子価ヨウ素反応剤によるアルケニルトリフルオロアセテート類の不斉α-アジド化反応については、再現性良く高い収率と良好なエナンチオ選択性で目的物を与える反応条件を見出した。 さらに、上記不斉マンニッヒ型反応や不斉N-ニトロソアルドール反応の反応システムを応用して、トリフルオロメチル基を持つ超原子価ヨウ素反応剤による1-インダノンから誘導したβ-ケトエステル類の触媒的不斉α-トリフルオロメチル化反応にも着手し、良好な結果を得ている。 不斉マンニッヒ型反応と不斉α-トリフルオロメチル化反応については、その予備的成果を学会で発表している。
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