研究課題/領域番号 |
19K05452
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安藤 吉勇 東京工業大学, 理学院, 助教 (40532742)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光化学反応 / キノン / 酸化還元 / C–H結合官能基化 |
研究実績の概要 |
昨年度は、これまで開発してきたキノン類の光酸化還元反応を鍵とした天然物合成と反応の基質一般性の拡充に取り組んだ。 抗腫瘍活性物質スピロキシンAは、ナフトキノンが歪んだオキサビシクロ骨格を介して二量化した構造を有している。さらに、分子全体がエポキシドや塩素などによって高度に酸化されており、合成化学的に挑戦的な天然物である。キノンの光反応を鍵として合成研究に取り組んだところ、初の不斉全合成を達成することができた。さらに、その合成の途上において、光反応に競合する暗反応の存在をつきとめ、それが酸または塩基によって促進されることを見出した。また、この過程で生じる生成物は光反応の時とは逆のエナンチオマーであることも発見した。この結果、一つの中間体から天然物の両エナンチオマーを合成する経路を開発し、スピロキシンAのエナンチオ分岐型全合成を達成した。 これまでキノンの光酸化還元反応に用いた基質は、1,5-水素移動を経由して進行するもののみであった。そこで、反応の基質一般性を広げることを指向し、1,6-水素移動が進行する基質に対して同様の光反応が進行するかを検討した。その結果、基質の設計次第で1,6-水素移動経由の反応が進行することを見出した。さらに、置換基効果について調査したところ、これまでと同様に反応点におけるカチオンの安定化効果が高いほど、反応が円滑に進行することが分かった。この傾向は、これまで想定していた反応機構と矛盾せず、光照射後に1,6-水素移動を経由して生じるビラジカルが電子移動により双性イオンとなり反応が進行していることを支持するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていたスピロキシンAの全合成を達成したことと、1,6-水素移動経由の光反応の開発がうまくいったため、この点については想定よりも研究を進めることができている。一方で、研究室の人員体制の事情により、着手予定であった課題を進められなかった部分もあり、全体の進捗状況としてはおおむね予定通りの水準と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1,5-水素移動経由の光反応を鍵とした天然物合成を行う。具体的にはオルトキノンを基質としたルブロマイシン類の合成に取り組む。 1,6-水素移動経由の光反応について、反応点の不斉情報が生成物へと保存されるか調査する。本反応はラジカルおよびカチオンを経由して進行するため、普通であれば反応点の立体化学の情報は失われる。しかし、反応が素早く進行すれば、不斉記憶の形式でその立体化学の情報が保持されるはずである。実際に1,5-水素移動経由の光反応では、立体特異的に反応が進行し、一般的な方法では制御困難な不斉中心の構築に成功している。1,6-水素移動経由の反応の場合は、反応中間体の自由度がより高く、立体制御に関わる結合の回転が容易であると予想されるため、その制御がより困難な基質である。一方で、それが達成できればそのインパクトは大きく、これまで不斉合成が困難であった天然物への道が拓ける。
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