独自に開発したキノン類の立体特異的な光酸化還元反応を基盤として、これまで不斉合成が困難であった天然物の全合成研究に取り組んだ。 抗腫瘍性抗生物質スピロキシンAについては、合成の途上で光反応に競合する暗反応の存在をつきとめ、それが光反応の時とは逆のエナンチオマーを与えることを見出した。結果、スピロキシンAのエナンチオ分岐型全合成を達成した。また、抗生物質プレウソメリンEG類については、その合成に向けて、1,6-水素移動を経由する光酸化還元反応を開発し、それが立体特異的に進行することを見出した。結果、最大の難関であるスピロアセタールの立体制御を解決し、初の不斉全合成を達成した。
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