研究課題/領域番号 |
19K05453
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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研究分担者 |
青木 俊樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80212372)
金子 隆司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90272856)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 円偏光 / らせん選択重合 / らせん巻き方向選択的分解反応 / 環化芳香族化分解 / 光学分割 |
研究実績の概要 |
3,5位にヒドロキシメチル基を有するフェニルアセチレンの4位にn-オクチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基を有するモノマーを合成し、らせん選択重合を検討した。n-オクチルジメチルシリル基を有するモノマーからは、収率良く橙色の可溶性高重合体が、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基を有するモノマーからは黄色の不溶性ポリマーを得た。また、これらポリマーはシス-シソイダル型のタイトならせん構造をとっていることを明らかにした。 XRD測定より、トリフェニルシリル基を有するポリマーの側鎖フェニル基の重なり合いの面間隔が最も大きく、MMFF94分子力場における分子モデリングでの計算結果と非常によく一致した。このポリマーは光照射による環化芳香族化分解(SCAT)の進行が従来の4位にドデシル基を有するポリマーよりも非常に遅く、SCAT 反応がらせん構造のピッチのわずかの違いに非常に敏感であることが明らかになった。 ドデシルオキシ基を4位に有するポリマーと比較して、n-オクチルジメチルシリル基を有するポリマーでは、極性溶媒下でもより安定なシス-シソイダル型らせん構造を維持していることがわかった。分岐したジメチルシリル基の立体障害および強い疎水性により水素結合が保護されているためと結論した。 3,5位にヒドロキシメチル基を有するフェニルアセチレンの4位にm-ターフェニル基を有するモノマーからシス-シソイダル型のラセミらせんポリマーを合成し、生成ポリマーが円偏光(CPL)照射によりSCATすることを明らかにした。 エステル基を介してラセミアルコールを4位に導入した3,5-ビス(ヒドロキシメチル)フェニルアセチレンのエナンチオマー選択的重合、続いて生成ポリマーのCPLによるらせん巻き方向選択的分解を行うことにより、ラセミアルコールの光学分割を実現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
置換基のかさ高さが異なるモノマー、平面性の大きい置換基を導入したモノマーのらせん選択重合ポリマーの合成とそのらせん構造についての知見を蓄積できた。それらポリマーの環化芳香族化分解を検討することで、進行促進についての重要な知見が得られた。また、より安定なシス-シソイダル型らせん高分子を合成するための設計指針が得られた。ラセミ置換基を有するモノマーのエナンチオマー選択的重合、生成ポリマーのらせん巻き方向選択的分解反応を組み合わせることで、モノマー構成要素のラセミ化合物の光学分割を達成することができた。今後、ポリマー側鎖の立体障害を制御制御するためのモノマーの設計およびらせん巻き方向選択的分解反応による環化三量体生成物へのねじれキラリティの導入などの検討課題はあるが、おおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平面性の高い広共役置換基を導入したらせんポリマーの合成を検討し、そのらせん構造について明らかにする。それらポリマーの通常光・円偏光照射による環化芳香族化分解反応、らせん巻き方向選択的分解反応について検討する。 また、平面性の高い置換基による隣接ユニット側鎖置換基間の立体障害による捻じれキラリティの生成および光環化芳香族化分解による三量体生成物へのキラリティの生成を目指す。 アキラル触媒系への円偏光照射によるキラル触媒種の生成について検討する。重合によるキラリティ増幅作用の検証を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は予想以上に光照射用のランプやフィルターの消耗が少なかったことやモノマーの種類を抑えて、構造計算などを併用し、掘り下げてポリマー構造を検討したこともあり、若干の予算が次年度に繰り越されることとなった。 (使用計画)次年度はこれまでの検討結果を踏まえて新規モノマーの設計・合成・重合を行うため合成試薬類の消耗品、また、円偏光分解などのためにランプやフィルター類の光学系消耗品も必要となるためそれらの購入に充てる予定である。
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