研究実績の概要 |
本年度は円偏光を不斉源とするらせん巻き方向選択的分解反応を発展させることで、不斉な化合物を起源としない光学活性化合物を創り出す方法を確立した。 具体例としては、メントールのラセミ混合物を用いてエステル結合により4-位にメンチル基を導入した3,5-ビス(ヒドロキシメチル)フェニルアセチレンモノマー(ラセミ混合物)から、二つのエナンチオ選択的反応、すなわちエナンチオ選択的らせん選択重合および円偏光照射によるらせん巻き方向選択的分解反応を連続的に組み合わせることにより、最終的に78%eeの高い光学収率で光学活性なメントールが得られ、光学活性化合物を使用しない円偏光照射による絶対光学分割に成功した。ラセミモノマーのらせん選択重合条件による重合ではエナンチオマー選択的に重合が進行し、D型モノマーとL型モノマーのブロックポリマーが得られ、また、それらが右巻き・左巻きのらせんブロックポリマーであることを、円偏光照射によるらせん巻き方向選択分解により明らかにした。 種々のシス-シソイダル型らせんコポリマーを合成し、環化芳香族化分解反応について検討した結果、ポリアセチレンの交互二重結合の単結合の二面角の大きさが効率のよい分解反応の達成のために重要であることを明らかにした。 らせん巻き方向選択分解反応後のキラリティー維持を目的とした4位にスチルベン構造および4位にm-タ-フェニル基をそれぞれ有する3,5-ビス(ヒドロキシメチル)フェニルアセチレンの重合により、可溶なシス-シソイダル型のラセミらせんポリマーを合成し、生成ポリマーが円偏光照射により環化芳香族化分解することを明らかにした。
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