研究実績の概要 |
前年に引き続き、「ロジウム錯体/キラルルイス酸」ハイブリッド触媒系の開発において、N-(α-ジアゾカルボニル)オキサゾリジノンから発生させた環状カルボニルイリドへのアルコールの不斉付加反応の反応機構をDFT計算により検討し、遷移状態の構造およびエネルギーのみならず、反応物、中間体および生成物のエネルギーを求め、エネルギーダイアグラムを完成した。エネルギーダイアグラムからも、アルコールによるプロトン化中間体を経て、プロトン化と同じ面から形式的にアルコキシドが付加する段階的な機構がエネルギー的に有利であることを明らかにした。 鎖状カルボニルイリドの不斉付加環化反応の開発に関しても、前年度に引き続き、同一炭素上にアセチル基が2つ置換したラセミ体のスチレンオキシド誘導体を鎖状カルボニルイリド前駆体として用い、キラルなビナフチルジイミン配位子と過塩素酸ニッケルより調製したルイス酸触媒存在下、アルデヒドに関する基質一般性を検討した。その結果、ヘテロ芳香族および脂肪族アルデヒドなど広い範囲のアルデヒドに対して適用でき、高いエナンチオ選択性で1,3-ジオキソラン誘導体が得られることを見出した。また、高エナンチオ選択的にシス付加環化体が得られる反応機構を明らかにする目的で、DFT計算を行い、遷移状態において、2価のニッケルにキラルなビナフチルジイミン配位子ならびにエポキシドから生成した鎖状カルボニルイリドが配位し、活性化したΔ-cis-β型の中間体に対して、アルデヒドが協奏的にエンド付加する遷移状態が最もエネルギー的に有利であり、反応の立体選択性をうまく説明できることを明らかにした。遷移状態の空間充填モデルを用いる考察においても、アルデヒドの接近が最も立体的に込み合いの少ない方向からであることよく示していた。
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