アルミニウムは資源豊富で元素戦略の観点からもその活用が渇望されているが、有機アルミニウムは炭素-アルミニウム結合の高い反応性により触媒としての利用は困難であった。しかし、応募者は分子内配位安定化を活用することで、ルイス酸性を精密制御可能な有機アルミニウム触媒を見出してきた。本研究では、これまでの応募者が得た知見を基に、炭素配位子の最大の強みである設計の自由度(炭素配位子の自在性)を存分に活用することで、高機能アルミニウム触媒を開発する。ルイス酸性を自在に調整できるアルミニウム触媒活性点と他の触媒活性点を協働させることで特異的な反応場を創出できるアルミニウム触媒の新機軸を確立することを目的に研究を進めた。具体的には、次の検討を行った。(1)ルイス塩基性部位の導入によるFrustrated Lewis Pairs触媒Pheox-Al錯体にルイス塩基性部位を導入することにより、アルミニウムをルイス酸性部位としたFrustrated Lewis Pairs (FLPs) 錯体を合成と触媒反応への応用を行った。オキサゾリン部位は五員環を形成して、アルミニウムに強固に配位していることがX線結晶構造解析により明らかになった。もう一つのルイス塩基性部位を四員環で配位するように設計すれば、オキサゾリン配位が熱力学的に有利となり、FLPs錯体となると考えられた。実際にホスフィノ基を導入することに成功した。この錯体はイソシアネートとオキシランの付加環化反応を触媒することを見出した。
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