研究課題/領域番号 |
19K05455
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西本 能弘 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30550115)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属触媒 / 有機金属化合物 |
研究実績の概要 |
アルミニウムは資源豊富で元素戦略の観点からもその活用が渇望されているが、有機アルミニウムは炭素-アルミニウム結合の高い反応性により触媒としての利用は困難であった。しかし、応募者は分子内配位安定化を活用することで、ルイス酸性を精密制御可能な有機アルミニウム触媒を見出してきた。本研究では、これまでの応募者が得た知見を基に、炭素配位子の最大の強みである設計の自由度(炭素配位子の自在性)を存分に活用することで、高機能アルミニウム触媒を開発する。ルイス酸性を自在に調整できるアルミニウム触媒活性点と他の触媒活性点を協働させることで特異的な反応場を創出できるアルミニウム触媒の新機軸を確立する。Pheox-Al錯体にルイス塩基性部位であるホスフィノ基を導入することにより、アルミニウムをルイス酸性部位としたFrustrated Lewis Pairs (FLPs) 錯体を合成と触媒反応への応用を行った。オキサゾリン部位は五員環を形成して、アルミニウムに強固に配位する。もう一つのルイス塩基性部位であるホスフィノ基を四員環で配位するように設計しており、オキサゾリン配位が熱力学的に有利となり、FLPs錯体となった。このFLPs錯体では、アルミニウムのルイス酸性を自在に調整可能であり、かつ、塩基性部位の多様性も炭素配位子の合成の容易さから担保されているために、反応基質に応じたFLPs錯体を調整し、エポキシドとイソシアナートとの付加環化反応を達成した。また、オキサゾリン部位を不斉補助基とすることでエポキシドとイソシアナートの収束的エナンチオ選択的付加環化反応が進行することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々なホスフィノ基を有するPheox-Al錯体の合成に成功した。具体的には、ジフェニルホスフィノ基もしくはジシクロヘキシルホスフィノ基を有する錯体を合成した。これらの錯体はホスフィノ基上の置換基により、そのルイス塩性を変化させることが可能であった。実際に、イソシアナートとこれらの錯体の反応では、アルミニウム中心がルイス酸部位として、またホスフィノ基がルイス塩基部位として反応し、付加錯体を与える。その中で塩基性の低いジフェニルホスフィノ基の錯体の反応は可逆性があり、ルイス塩基性の高いジシクロヘキシルホスフィノ基の錯体では、その反応は不可逆性となった。これらの性質の変化は触媒活性にも影響を与えることが判明した。エポキシドとイソシアナートとの環化付加反応において、これらのアルミニウム錯体は触媒活性を示すことが前年度の研究により判明していた。この触媒活性はリン上の置換基に大きく影響を受け、ジフェニルホスフィノ基よりジシクロヘキシルホスフィノ基を有する錯体のほうが非常に高い触媒活性を示した。このことより、リン置換基により、錯体の塩基として性質だけではなく、触媒活性までも調整できることがわかった。また、オキサゾリン部位を不斉補助基とすることでエポキシドとイソシアナートの収束的エナンチオ選択的付加環化反応が進行することが判明した。反応機構の解明により、エポキシドが2分子関与した錯体が真の活性触媒であることがわかり、現在、さらなる詳細な反応機構の解明を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ホスフィノ基を有する不斉Pheox-Al錯体がエポキシドとイソシアナートの収束的エナンチオ選択付加環化反応を促進することを見出したため、詳細な反応機構を実験・量子化学計算の両面から明らかにする。
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