研究課題/領域番号 |
19K05457
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
今田 泰嗣 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (60183191)
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研究分担者 |
南川 慶二 徳島大学, 教養教育院, 教授 (70250959)
荒川 幸弘 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (70709203)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / フラビン触媒 / フォトレドックス触媒 / 酸素添加反応 / 脱水素反応 |
研究実績の概要 |
本研究課題ではN(5)位無置換フラビン分子の触媒機能を開拓し、実用的な有機分子触媒として確立することを目的とし、フラビン酵素が司る①モノオキシゲナーゼ型、②オキシダーゼ型、③フォトリアーゼ型の酵素機能のフラビン分子触媒によるシミュレーションを提案している。 ①モノオキシゲナーゼ型の触媒作用に関しては、ポリメタクリル酸へのフラビン分子の導入を達成し、フラビン分子周辺に配置したカルボキシル基との相乗効果により、スルフィドの酸素酸化反応が進行することを明らかにした。また、球状ポリエチレンのフルオロアシル化処理を利用したポリエチレンへのフラビン分子およびカルボキシル基の導入に成功し、スルフィドの酸素酸化反応に対する触媒活性を有することを明らかにした。 ②オキシダーゼ型の触媒作用に関しては、四メタクリル酸リボフラビンと二メタクリル酸エチレングリコールの重合反応誘起相分離条件でのラジカル共重合により、多孔性含フラビンポリメタクリル酸エステルの合成を達成し、オレフィンの水素添加反応における高い触媒活性と高い回収再利用性を明らかにした(Tetrahedron Lett. 2020)。また、四メタクリル酸リボフラビン、二メタクリル酸エチレングリコールおよびメタクリル酸メチルの懸濁重合により、球状の含フラビンポリメタクリル酸エステルの合成を達成し、これをフロー反応系の固定床触媒として利用し、連続的なオレフィンの水素添加反応システムを構築した。 ③フォトリアーゼ型触媒作用に関しては、フラビン分子フォトレドックス触媒と第二級アミン触媒の協働触媒作用によるアルデヒドのα位オキシアミノ化反応を開発した。さらに、フラビン触媒と第二級アミン触媒を共有結合により一体化したフラビン―アミン複合型触媒を設計し、極めて高い量子収率(Φ=0.80)で反応が進行することを明らかにした(Org. Lett. 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①モノオキシゲナーゼ型の触媒作用に関しては、学術論文としての成果公開には至っていないが、これまで報告例の少ない中性フラビン分子を触媒とする酸素添加型酸化反応を見出しており、触媒活性の向上が今後の課題である。 ②オキシゲナーゼ型の触媒作用に関しては、含フラビン多孔性ポリメタクリル酸エステルの合成とその触媒作用に関する学術論文としての成果公表に加えて、フロー反応系の構築に成功している。 ③フォトリアーゼ型触媒作用に関しては、フラビン―アミン複合型触媒に関する学術論文としての公表に加えて、不斉反応への展開、新規触媒反応系の開発の端緒を明らかにしている。 以上より本研究は、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの進捗状況を踏まえ、今後は研究概要に示す①~③に関して以下に示す計画に基づいて研究を推進する。 ①モノオキシゲナーゼ型の触媒作用に関しては、スルフィドの酸素添加反応における含フラビンポリメタクリル酸および含フラビン含カルボン酸ポリエチレンの触媒活性の向上を検討する。具体的には、フラビン分子とカルボキシル基との組成比率を中心として検討を行う。また、Baeyer-Villiger反応をモデル反応とする検討も行う。シクロペンタノン、シクロヘキサノンのBaeyer-Villiger反応については引き続き検討する。 ②オキシゲナーゼ型の触媒作用に関しては、フロー反応系の効率向上を中心に検討する。反応条件の最適化に加えて、球状ポリマーの粒子サイズ、フラビン分子の含有率に関しても検討する。 ③フォトリアーゼ型触媒作用に関しては、アルデヒドのα位オキシアミノ化反応の不斉反応への展開に加えて、フロー反応系への展開も検討する。そのほか、すでに端緒を明らかにしている、ニトロンやスルホキシドからの電子移動を鍵とする新規フォトレドックス触媒反応系を重点的に検討する。
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