研究課題/領域番号 |
19K05459
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
尾野村 治 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (60304961)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリセリン / 水酸基活性化 / 不斉非対称化 / グリセリン酸 / グリセロリン酸 / 不斉合成素子 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、バイオディーゼルの普及に伴い派生したグリセリンの余剰問題を解決するために、グリセリンから医薬品や液晶の重要な原料となる光学活性グリシジルスルホネートへの変換法、グリセリン酸への酸化法、グリセロリン酸を始めとするレシチンやセラミド機能物質への変換法の確立を目指している。グリセリンをこの様な化合物にごく少量の触媒を用いて不斉変換できれば価値が高いが、その3つの水酸基を不斉識別して反応させることは大変難しい。我々はこれまでにジオールの水酸基をルイス酸により活性化すれば一方の水酸基のみを容易に後続反応できること、ここにキラルルイス酸を用いれば光学活性化合物が得られることを報告している。本研究課題に於いては、この手法をグリセリンに適用し、不斉モノスルホニル化により有用なC3キラル合成素子に変換できること、様々な置換基を有する光学活性グリセリン酸に不斉酸化できること、不斉ホスフィネート化により光学活性グリセロリン酸に誘導できることを見出した。いずれの反応も高収率、高エナンチオ選択的に進行するよう反応条件を改善できた。さらに、上述のC3キラル合成素子から短工程でスフィンゴリピッドEのようなセラミド機能物質へ誘導できる方法の開発にも成功した。加えて、グリセリンの類縁体であるトリストリスと称されるトリスヒドロキシメチルアミノメタンの3つの水酸基を不斉識別して有用化合物に変換する手法も見出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリセリン骨格が母骨格となる医薬品や材料として有用である、多様な置換基を有する重要なグリセリン誘導体を簡便且つ効率的に合成できる、不斉スルホニル化反応、不斉酸化反応、不斉ホスフィニル化反応による不斉非対称化を開発することができた。また、類似構造のトリスの3つの水酸基の不斉識別にも成功したので、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
不斉酸化により合成したグリセリン酸誘導体を有用なアミノ酸誘導体へ変換を行う。また、グリーンケミストリーの観点から、現在臭素カチオン源として使用している臭素化合物を触媒量の臭化物塩に置き換えることができるよう、電気化学的手法の開発に取り組む。
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