研究課題/領域番号 |
19K05460
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
稲井 誠 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (20621626)
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研究分担者 |
菅 敏幸 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10221904)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パクタマイシン / 非対称化 |
研究実績の概要 |
パクタマイシン及びパクタマイケートは,in vitro 及び in vivo での強力な抗ウイルス,抗腫瘍及び抗マラリア活性など興味深い生物活性を有しており,医薬品のリード化合物しても注目されている.しかし本化合物類は,哺乳類の正常細胞にも強毒性を示し,選択毒性を有する誘導体の創成には至っていない.合成化学的にも パクタマイシン及びパクタマイケートのシクロペンタン環上に含まれる「連続する含窒素・酸素四置換炭素」の高エナンチオ・ジアステレオ選択的な構築法の開発は,非常に挑戦的な課題である.本研究ではこの課題に取り組み「分子の非対称化」をキーワードに「含窒素不斉四置換炭素」を含むパクタマイシンの合成を検討した. 実際の合成では,ロジウム触媒を用いてクロヘキサジエン非対称化し アジリジンを合成した後,NaN3 による 2 位選択的な開環,Boc 保護と続く加水分解により四置換炭素を有するシクロヘキセンを得た.さらに,オゾン分解と続く五員環への再環化によりシクロペンテン誘導体とした後,エキソメチレンへと変換後,選択的エポキシ化と酸化を行いケトンを合成した.続いて,メチル基の導入とジオールの保護を行った後,Curtius 転移によりウレアを導入し鍵中間体の合成を完了した. また,光学活性な合成中間体の取得を目指し不斉非対称化を検討したところ,ロジウム触媒としてRh2(S-TCPTTL)4 と再結晶を組み合わせることでほぼ光学的に純粋な化合物の合成に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り鍵中間体の合成を完了し,来年度から全合成を目指すとともに新合成経路の開拓を開始する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,改良合成法として,[4+2] 環化付加反応により連続する立体化学を構築する計画である.不斉水素移動反応とメタセシス反応より容易に合成可能なシクロペンタジエンに対し BocN=O を作用させ三連続不斉炭素を構築する.本反応では,下側に張り出すメチル基の立体障害を避け上部よりニトロソ化合物が接近することで望む立体科学を得る.本合成では,容易に構築可能なメチル基の不斉をシクロペンタン上の立体化学に転写していく戦略である.本研究にて確立する 含窒素連続不斉四置換炭素築法は,パクタマイシン類のみならず様々な天然物に応用可能な汎用性の高いものとなる.
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