パクタマイシン及びパクタマイケートは,in vitro 及び in vivo での強力な生物活性を有しており,医薬品のリード化合物しても注目されているが,哺乳類の正常細胞にも強毒性を示し,選択毒性を有する誘導体の創成には至っていない.合成化学的にもパクタマイシン及びパクタマイケートのシクロペンタン環上に含まれる「連続する含窒素・酸素四置換炭素」の高エナンチオ・ジアステレオ選択的な構築法の開発は,非常に挑戦的な課題である.本研究ではこの課題に取り組み含窒素不斉四置換炭素を含むパクタマイシンの合成を検討した. 第一世代合成では,ロジウム触媒を用いてクロヘキサジエン非対称化しアジリジンを合成した後,位選択的な開環により四置換炭素を有するシクロヘキセンを合成した.さらに,環縮小反応によりシクロペンテン誘導体とした後,エキソメチレンへと変換後,選択的エポキシ化と酸化を行いケトンを合成した.続いて,メチル基の導入とジオールの保護を行った後,Curtius 転移によりウレアを導入し鍵中間体の合成を完了した.一方,光学活性な合成中間体の取得を目指し不斉非対称化を検討したところ,ロジウム触媒としRh2(S-TCPTTL)4 と再結晶を組み合わせることでほぼ光学的に純粋な化合物の合成に成功した. 第二世代合成では,アセトアセタミドを出発原料としてシクロペンタジエン中間体へと導いた後,鍵反応となるニトロソDiels-Alder反応により,高い面及び位置選択制にて目的物を得た.その後、不安定なオキサアザビシクロ[2.2.1]ヘプテン骨格を損なうことなく変換し、ニトロソDiels-Alder反応成績体から5工程にてJohnsonらの全合成中間体へと導き形式合成を完了した.
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