研究課題/領域番号 |
19K05462
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
南雲 紳史 工学院大学, 先進工学部, 教授 (40246765)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アレニコライドA / アプリロニンA / 炭酸エステル / 閉環メタセシス |
研究実績の概要 |
海洋放線菌が産生するアレニコライドAとアメフラシが産生するアプリロニンAの合成研究を行った。 アレニコライドAに関しては、すでに全炭素骨格の構築に成功していたが、最終段階である保護基の除去で困難に直面していた。天然物のC30-C31位にあるエポキシドを立体選択的に構築するためには、隣接している29位水酸基を手掛かりにする必要があった。しかし、あまり早い段階でエポキシドを導入すると、その後の合成段階で用いられる方法に制限がかかってしまう。そのため、C29-C31位はアリルアルコールの形で、かつ29位水酸基を保護した状態で最終段階まで保つ計画を立てた。その保護基として、当初PMB基を用いたが、脱保護する際に化合物の分解が起こってしまった。次に、C27-C36セグメントの段階で、29位の水酸基をMTM基で保護したのち、C21-C26セグメントとのクロスメタセシスを試みた。しかし、MTM基が含むイオウ原子のためにメタセシスの触媒が不活化し、カップリング体の収率が極めて低かった。 保護基の検討に関しては苦戦したが、その過程でC21-C26セグメントとC27-C36セグメントの連結に関する新たな方法を見出した。二つのセグメントを炭酸エステルとして連結したのち閉環メタセシスを行ったところ、高収率で大環状化合物を得ることができた。現在、炭酸エステル部を加水分解することに成功した。さらに増炭によりC19-C36セグメントとし、C1-C18セグメントとの連結の準備ができた。 アプリロニンAの合成研究に関しては、独自に開発したエポキシ不飽和エステルからの4連続不斉中心構築反応を利用してC5-C14セグメントを合成していたので、昨年度はC15-C20セグメントの合成を検討し概ね合成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アレニコライドの合成に関して、29位水酸基の適切な保護基を探索することに困難を極め多くの時間を要した。合成の先端における検討なので、少量実験でより多くの実験ができるようにしたが、それでも検討するための基質が不足してしまうことが起こった。そのため、最初の段階からの原料合成を再度行わなければならなかった。 また、コロナ感染対策のため、入室制限をかけた。そのため、本研究を担当した学生の実験日数が少なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
アレニコライドAの全合成に関しては、適切な保護基に関する情報がわかってきたので、二段階目の閉環メタセシスを行う予定である。これにより26員環ラクトンを構築し、側鎖部のエポキシドの立体選択的構築と脱保護を行う。 アプリロニンAに関しては、合成した二つのセグメントを連結後、24員ラクトンの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染対策のため、研究室の入室制限を行った。そのため、昨年度中に十分に研究活動ができなかった。
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