研究課題/領域番号 |
19K05463
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坂井 教郎 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 教授 (00328569)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタロセン錯体 / ジルコニウム / ハフニウム / 三フッ化ホウ素 |
研究実績の概要 |
ジルコノセンフッ素化錯体を用いて、含フッ素有機化合物の炭素-フッ素結合の切断と炭素-炭素結合形成への触媒化反応の開発を行い。以下の分子変換法開発と知見を見出した。 新たに合成したジルコノセンフッ素化錯体(Cp2ZrF2)を触媒に、トリエトキシシランを還元剤として用い、フェニルアセチレンとトリフルオロボラン・ジエチルエーテル(BF3-OEt2)錯体のカップリング反応によるアルケニルボランの触媒的合成を検討した。その結果、62%の最高収率で目的とするアルケニルボラン誘導体を合成することに成功した。10 mol%のジルコノセンジフルオリドを用いていることから6回程度の触媒反応を達成することができた。ホウ素-フッ素結合からホウ素-炭素結合への分子変換をジルコノセンフッ素化錯体をこのようなメタロセン錯体を触媒量用いて触媒サイクル化した例はこれまでにほとんど例がなく、非常に有意義な結果である。 触媒反応には適応できなかったが、新たに合成したハフノセンフッ素化錯体(Cp2HfF2)を1当量、トリエトキシランを5当量用いて、ジフェニルジスルフィドを処理するとベンゼンチオールに高収率(90%)で還元できることを新たに見出した。また、その応用として、この触媒系に対してジフェニルジスルフィドとアルキン類を付すとヒドロチオレーションが起こり、フェニルアルケニルスルフィドが新たに合成できることも明らかにした。さらに、本反応系はスチレン誘導体のようなアルケン類にも適用でき、フェニルアルキルスルフィド合成への応用も見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想では、反応基質上の炭素-フッ素結合が切断後、脱離したフッ素アニオンが今回新たに合成したフッ化ジルコノセン錯体上に戻り、触媒が再生する触媒的反応機構を想定していた。しかし、反応基質の炭素-フッ素結合が強くその切断が予想よりも困難で、切れたフッ素アニオンが戻る経路が巧く進行せず、予想の触媒サイクルを進行させられなかったことが主な理由である。 そこで、炭素-フッ素をもつ有機化合物からホウ素-フッ素結合をもつトリフルオロボラン・ジエチルエーテル(BF3-OEt2)錯体を反応基質に用いて、ホウ素-フッ素結合の切断からホウ素-炭素結合形成への分子変換の触媒化を検討した。こちらの分子変換では反応性は多少低いが、概ね目的の反応を進行させることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
フッ化ジルコノセン錯体の触媒活性を上げるために配位子の構造や電子状態を変えた新たなジルコノセン錯体の分子設計およびその合成を行う。また、1置換フルオロベンゼンよりも炭素-フッ素結合の切断が容易なフッ化ベンジルやヘキサフルオロベンゼンなどの基質に展開していくことで問題点を解決していく。さらなる展開として、アルキンとハロゲンによるハロゲン化の触媒化反応にも本触媒系を適用できるかどうか探索する。
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