研究課題/領域番号 |
19K05476
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
山崎 祥子 奈良教育大学, 理科教育講座, 教授 (50182481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Knoevenagel 縮合 / 連続的環化反応 / インデン / 分子内[4+2]付加環化 / ブロモスチレン誘導体 / ベンゾ[f]イソインドール |
研究実績の概要 |
ヘテロ環や炭素環化合物は医薬品や有機材料などの有用な物質に多く存在し、その高効率的合成開発が期待される。基質の高い反応性を利用し、低エネルギー型、触媒、短工程での選択的な新合成反応開発を行い、反応機構をDFT計算を用いて考察した。 インデン骨格は生理活性物質や機能性物質に多く見られる。基質の1,1-ジフェニルエテン部分の反応性の特徴を利用した、連続的Knoevenagel縮合/環化反応によるインデン誘導体の合成を行った。2-(1-フェニルビニル)ベンズアルデヒドとマロン酸ジメチルとの種々の縮合の反応条件下、縮合、続いてMichael付加による環化でインデン、さらに脱水素が起こったベンゾフルベン誘導体がそれぞれ得られた。ピペリジン-酢酸、四塩化チタン-ピリジン/トリエチルアミンなどの反応条件に依存して、選択的に得られた。種々の誘導体を用いて検討したところ、同様にインデン、ベンゾフルベン誘導体が得られた。ベンゾフルベン誘導体は橙色などの結晶である。 ハロゲン置換基効果が興味深い、α-ブロモスチレン修飾アミンと不飽和カルボン酸とのアミド縮合を経る分子内付加環化反応を調べた。(Z)-3-アリール-3-ブロモ-4-プロペニルアミンとエテントリカルボン酸ジエチルとのアミド縮合反応では室温で[4+2]付加環化を経てOBt置換ベンゾ[f]イソインドール誘導体が得られた。また、アミンとフマル酸モノメチルとの縮合反応では室温でアミド縮合のみが起こった。縮合反応を110 °C加熱で行うと、連続して[4+2]付加環化、脱HBrが起こり、ジヒドロナフタレン誘導体が得られた。アミド生成物をEt3Nと加熱してもジヒドロナフタレン誘導体が得られた。アミドをHClと140 °Cで加熱すると修飾ナフタレン誘導体が得られた。ジヒドロナフタレン誘導体の脱水素化でも修飾ナフタレン誘導体が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子欠乏性アルケンと1,1-ジフェニルエテン部分の反応性の特徴を利用して、Knoevenagel 縮合を含む連絡的な反応で、新規インデン誘導体の合成を開発した。また、不飽和カルボン酸とα-ブロモスチレン誘導体アミンとの分子内付加環化反応で、ヘテロ環縮環ナフタレン骨格を合成した。計画に従い、さらに新規な電子欠乏性アルケンを利用した高効率的選択的環化合物の合成について試みている。また選択性を制御する因子について解明し、有機合成の新手法として発展させることを行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
研究はほぼ当初の予定通り進行している。さらに研究を発展させるため、種々の活性アルケンを用いた反応、2-アリールベンズアルデヒドとのKnoevenagel縮合により生成する電子欠乏性アルケンの連続的な新規効率的な環化反応を設計し、検討する。キラル触媒を用いたエナンチオ選択的反応に展開する。ブロモスチレンを利用したヘテロ環縮環ナフタレンの合成では、芳香環上の置換基を変換し蛍光性などを持った機能性物質を合成する。 また、これまでの成果を学術論文誌等において発表しつつ問題点を整理し、研究の発展を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度当初、新型コロナ感染防止により大学への入構が制限されたため、研究の進行に大きな影響を与えた。その後、研究状況は元に戻っている。その影響で、今年度購入を予定していた実験試薬、実験器具の購入を次年度に繰り越した分がある。 (使用計画)研究を継続しさらに発展させるため、令和2年度の繰り越し金は、令和3年度の試薬、ガラス器具、実験器具などの一部に充てる計画である。次年度の研究計画は、最終的には当初の予定通りの進行を目指す。試薬、ガラス器具などの消耗品および実験補助謝金を使用する。また、学術論文誌等への研究成果発表にも使用する計画である。
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