• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

多成分タンデムカップリング反応による機能性分子の効率的合成及びフロー合成への展開

研究課題

研究課題/領域番号 19K05479
研究機関徳島大学

研究代表者

上野 雅晴  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80361509)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードワンポット反応 / タンデム反応 / カップリング反応 / 機能性材料 / ポリアリール / Riccardin C / グリーンケミストリー / ポットエコノミー
研究実績の概要

フロー連続合成に適したパラジウム触媒を新たに開発、基質を段階的に加えていくことで多成分からなるカップリング反応を一挙に進行させ、医薬品中間体を はじめ高分子前駆体や液晶といった機能性材料として用いられている多置換ポリアリール化合物を効率的かつ網羅的に合成する新手法を開発することを着想し、研究を行なった。
今年度は本研究課題の具体的な応用展開例として提案していた、抗腫瘍活性化合物 Riccardin Cの短工程骨格合成に関し、昨年度に引き続き検討を行なった。対応する4つのユニットを別途合成し順次ワンポットタンデムカップリング反応に付したところ、望まない位置でカップリンング反応が進行した副生成物を伴うこと無く、目的とする4成分連結体が単一の化合物として高収率で得られることを見出した。さらに、得られた4成分カップリング生成物より短工程で形式全合成をも達成可能であるが、4成分カップリング反応よりその後の誘導までワンポットまで行なえる事も確認し、ポットエコノミーの実用例を示すことができた。更にRiccardin Cの類縁体合成を志向し、ワンポットタンデムカップリング反応に関わる4つのユニットの置換基を種々変更し、網羅的に合成できる適切なユニット設計の指針を示すことができた。
一方、一昨年度開発に成功した「薗頭カップリング反応」と「鈴木-宮浦カップリング反応」からなるワンポットタンデム反応に関しても溶媒として水のみを用いることで有機溶媒フリーでの反応が実現できる事を見出しているが、より実用的な反応例を示すべく、単離・精製過程でも有機溶媒を一切用いない反応プロセスの実現を目指し検討を行なった。反応終了後の反応系から直接昇華精製する事により80%以上の回収率で目的物を直接得ることができ、抽出・精製過程で必要であった有機溶媒やシリカゲルを用いない合成プロセスを実現できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度はサブテーマとして掲げた「多成分カップリング反応を鍵段階とする機能性分子ライブラリーの開発」を中心に手掛け、本研究課題で計画している内容に関し順調に進展している。特に抗腫瘍活性化合物 Riccardin Cの短工程骨格合成に関しては4成分ユニットのワンポットカップリング反応を実施するだけで無く、Riccardin C自体の形式全合成をワンポットで行う事にも成功した。また、各段階を単離・精製している過去の報告における総収率と比較して、今回開発した4成分ワンポットカップリング反応による合成では単離・精製工程が一段階で済むだけで無く収率も上回っており、本手法の有用性が強く示される結果となった。また、Riccardin Cの類縁体合成を志向すると共に、4成分ワンポットタンデムカップリング反応に関わる反応性に関する網羅的な知見を得るべく、Riccardin Cの骨格を成す4つのユニットの炭素-炭素結合切断位置を移動した物や置換基を種々変更し、カップリング反応に付す事により、類縁体合成における適切なユニット設計の指針をも示すことができた。これは本手法が極めて汎用性が高い事を示す結果であり、今後の展開が期待できる。
更に、サブテーマとして掲げた「効率的なワンポット多成分カップリングの開発」に関しても更なる見直しを行ない、回収率に改善の余地があるものの、反応のみならず単離・精製過程でも有機溶媒を用いない手法を提案することができた。これはグリーンケミストリーにおける一つの具体的な解決指針であることから、本手法の更なる改善を行う事により学術的な観点のみならず、産業的な視点からも重要な結果であると思われる。

今後の研究の推進方策

先に示した結果を踏まえ、当初予定している課題内容は概ね達成できているため、今後は結果を踏まえた積極的な展開を行なう予定である。
「薗頭カップリング反応」と「鈴木-宮浦カップリング反応」とのタンデムカップリングにおいて、有機溶媒フリーの反応開発のみならず単離・精製過程でも有機溶媒を用いない手法を見出すことが出来たため、回収率の向上・基質適用範囲の拡大・「Heck反応」などの他の反応への展開を積極的に行なっていく予定である。
多成分カップリング反応を鍵段階とする抗腫瘍活性化合物Riccardin Cの形式全合成も達成しているものの、更に改善を図ると共に、原料合成も含めた全合成自体も単離・精製過程をなるべく省いた省ポット合成に展開していきたい。また、他の機能性材料の効率的合成にも積極的に展開していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

計画当初参加を予定していた学会発表の開催がオンライン開催(Pacifichem2001、日本化学会第102春季年会)となり、執行予定であったその分の旅費が未執行となった。研究は概ね計画通りに進捗したが年度内に論文の採択ができなかったため、次年度において論文投稿費及び必要であれば採択に関わる追加の試薬購入代金(物品費)に充てる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)

  • [学会発表] RiccardinCの全合成をモデルとした効率的ワンポットタンデムカップリング反応の研究-ユニット合成の簡便さを考慮した適切な炭素-炭素切断位置及び組み合わせる官能基の設計-2022

    • 著者名/発表者名
      小畠 美穂、三好 德和、上野 雅晴
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] 金属ストロンチウムを用いる新しい形のシリルエーテル化反応の開発2022

    • 著者名/発表者名
      三好 亜季、宮崎 泰彰、久保 誠輝、上野 雅晴、三好 德和
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] Development of Multicomponent, One-pot Sonogashira-Suzuki Tandem Coupling Reaction in Water2021

    • 著者名/発表者名
      Masaharu Ueno, Kazuki Tani, Norikazu Miyoshi
    • 学会等名
      The 2021 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies (Pacifichem).
    • 国際学会
  • [学会発表] Total synthesis of Riccardin C using one-pot tandem coupling reactions2021

    • 著者名/発表者名
      Miho Kobatake, Norikazu Miyoshi, Masaharu Ueno
    • 学会等名
      The 2021 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies (Pacifichem).
    • 国際学会
  • [備考] 徳島大学研究者総覧ー上野雅晴

    • URL

      http://pub2.db.tokushima-u.ac.jp/ERD/person/292981/profile-ja.html

  • [備考] 研究室を含めた化学講座のHP

    • URL

      https://web.ias.tokushima-u.ac.jp/ac-lab/index.html

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi