多成分からなるカップリング反応を一挙に進行させ、医薬品中間体をはじめ高分子前駆体や液晶といった機能性材料として用いられている多置換ポリアリール化合物を効率的かつ網羅的に合成する新手法を開発することを着想し、研究を行なった。 今年度は本研究課題の具体的な応用展開例として提案していた、抗腫瘍活性化合物 Riccardin Cの短工程骨格合成に関し、対応する4つのユニットを別途合成し順次ワンポットタンデムカップリング反応に付したところ、望まない位置でカップリング反応が進行した副生成物を伴うこと無く、目的とする4成分連結体が単一の化合物として高収率で得られることを見出した。さらに、系中発生した4成分カップリング生成物よりその後の誘導まで合計5ステップをワンポットまで行なえる事も確認し、ポットエコノミーの実用例を示すことができた。更にRiccardin Cの類縁体合成を志向し、カップリング反応の結合位置の異なるユニットや置換基を種々変更した誘導体を合成し、網羅的に合成できる指針を示すことができた。 一方、ワンポットタンデム反応に関しても溶媒として水のみを用いることで有機溶媒フリーでの反応の開発に成功した。この際、試薬の暫時添加をする事なく反応温度の変更のみでタンデム反応を制御可能であることを見出したほか、基質一般性も20例以上示す事ができた。また、反応終了後の反応系から直接昇華精製する事により80%以上の回収率で目的物を直接得ることができ、抽出・精製過程で必要であった有機溶媒やシリカゲルを用いない合成プロセスを実現できた。
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