研究課題/領域番号 |
19K05480
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
白川 誠司 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60459865)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 不斉合成 / カルコゲン / アミノ化 / ハロゲン化 / 二官能性触媒 / 触媒設計 / アルケン |
研究実績の概要 |
昨年度の研究では、独自のアイデアに基づいて設計・合成したキラル二官能性スルフィド触媒が、アルケンの不斉ブロモラクトン化反応に有効であることを明らかにした。本年度の研究では、キラル二官能性スルフィド触媒のさらなる有効性を示すため、アルケンの不斉ブロモアミノ環化反応による有用含窒素ヘテロ環化合物の効率的不斉合成への適用について検討した。これまでに構築したキラル二官能性スルフィド触媒ライブラリーを活用し、不斉ブロモアミノ環化反応に有効な触媒の探索を行った。その結果、ウレア部位を有するキラル二官能性スルフィド触媒が、本反応に効果的であることを見出した。触媒構造のファインチューニングに加え、反応基質における窒素上の保護基の最適化を行うことで、高エナンチオ選択的に目的のインドリン誘導体を得ることに成功した。本不斉反応で得られる光学活性インドリンは、臭素を脱離基とした変換反応により、様々な官能基を有する光学活性含窒素ヘテロ環化合物へと変換可能であることがわかった。また、医薬品合成のための鍵となる中間体化合物である、メチルインドリンの不斉合成にも適用できることを明らかにした。さらに、本不斉触媒反応における二官能性触媒の機能を明らかにするため、計算科学的手法を用いた遷移状態構造の詳細な考察を実施した。その結果、二官能性スルフィド触媒設計の重要性を明らかにすることに成功した。本研究で得られた知見を生かすことで、今後のさらなる不斉反応開発への展開が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度開発したキラル二官能性スルフィド触媒を用いた、不斉ブロモアミノ環化反応への応用展開には成功した。しかし、申請当初計画していた、単縦なアルケンを反応基質とした、分子間での触媒的不斉合成反応へのより挑戦的な展開についての検討に関しては、コロナウイルスの影響による研究実施の制限もあり、研究の進展がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したキラルスルフィド触媒ライブラリーを活用し、石油由来の単純なアルケンを原料として用いた不斉合成反応の検討を行う。これまでに実施した、分子内での不斉反応開発で得た知見を基に、反応条件を精査し、実用的反応系の確立を目指す。単純アルケンを用いた反応においても、計算科学的手法を活用した遷移状態構造の詳細な考察を行う。これらの考察を基に、必要に応じて単純アルケンを用いた反応に最適な触媒の再設計を行う。本触媒反応系を活用し、アルケンと様々な試薬の反応により、有用キラル分子のライブラリー合成を行う。また、生物活性化合物の中間体合成への適用や、実用化を視野に入れたラージスケールでの反応の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響による研究実施の制限に伴い、当初の予定よりも研究の進展がやや遅れている。このため、本研究実施に使用予定だった研究予算の執行もやや遅れ、研究費の次年度使用が生じた。これらやや遅れている研究を、積極的に実施するための試薬等購入費として、次年度使用分の研究費を活用する。また、学会等への出張旅費の支出を予定していたが、学会がオンライン開催となったため、交通費および宿泊費用分の予算が次年度使用分となっている。本費用に関しても、オンライン或いは現地開催の学会へ積極的に参加し、成果発表および情報収集のための費用として活用する。
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