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2021 年度 実施状況報告書

不斉自己触媒反応を用いるキラル有機化合物のホモキラリティー起源の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K05482
研究機関早稲田大学

研究代表者

そ合 憲三  早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, その他(招聘研究員) (90147504)

研究分担者 川崎 常臣  東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (40385513)
朝日 透  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80222595)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード不斉自己触媒反応 / Soai反応 / 不斉の起源 / ホモキラリティー / ジアルキル亜鉛 / 硫酸トリグリシン / 電場 / ピリミジンカルバルデヒド
研究実績の概要

地球上の全ての生物は,L-アミノ酸やD-糖質などに示されるように,実像と鏡像の関係にあって重ね合わせることができない一方のキラル化合物から構成されており,生命のホモキラリティーと呼ばれている。キラル化合物のホモキラリティーの起源を解明することは,生命の起源解明にも関連する長年の課題とされている。本研究は,鏡像体過剰率が極微小から99.5% ee以上に著しく向上する不斉自己触媒反応(the Soai reaction)を用いてホモキラリティーの起源を解明すること,併せて不斉自己触媒反応の機構を解明することを目的とする。
前年度に続き,アキラルなグリシン3分子と硫酸が形成する硫酸トリグリシン(TGS)結晶を不斉の起源として用いて検討した。TGSは静電場の方向を逆移転することにより,結晶キラリティーが逆転することが知られている。結晶キラリティーの逆転の分子機構を明らかにした。さらに,P体TGS存在下でジイソプロピル亜鉛とピリミジン-5-カルバルデヒドの不斉自己触媒反応を行うと,(R)-ピリミジルアルカノールが極めて高い鏡像体過剰率99.5% ee以上で生成し,逆のS体TGS存在下では(S)-ピリミジルアルカノールが99.5% ee以上で生成した。これにより静電場の向きと分子キラリティーとをTGSおよびthe Soai反応を介して関連付けることができた。
さらに,不斉自己触媒反応(the Soai reaction)における鏡像体過剰率向上の機構解明を目的として,反応系中における触媒(ピリミジルアルカノールのイソプロピル亜鉛アルコキシド)構造の会合状態を円2色性スペクトルを用いて検討したところ,溶液中では4量体と2量体の平衡状態にあることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ホモキラリティーの起源を解明することは,生命体がL-アミノ酸などの一方の鏡像異性体から成り立っていることから,生命の起源を探ることにも関連する長年の未解決課題とされている。鏡像体過剰率が向上する不斉自己触媒反応(硤合反応,Soai reaction)を用いて,静電場の方向によりキラリティーが変換する硫酸トリグリシン(TGS)を不斉開始剤とする硤合反応により,同一のTGSから静電場の向きを変換することにより,望む絶対配置のキラル化合物を高い鏡像体過剰率で得ることができた。本成果はキラリティー研究の歴史において初めての位置を占めるものである。さらに,硤合反応の機構に関して世界の研究グループが研究を行っており高い関心を集めている。不斉自己触媒が2量体,4量体,オリゴマーなどに会合した状態で作用して鏡像体過剰率が向上するものと考えられており,何量体であるかが議論の的であった。本研究では溶液中でCD測定を測定することにより,4量体と2量体が平衡状態で存在することが示唆される結果がえられた。本結果は硤合反応の機構に関する新たな知見である。以上のとおり,不斉自己触媒反応を用いてホモキラリティーの起源を解明する糸口や,不斉自己触媒反応の機構解明に資する知見を得ることができでおり,おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

不斉自己触媒反応(Soai反応)を用いて,ホモキラリティーの起源を解明する研究を推進する。アキラルな有機化合物が形成するキラル結晶やキラルな金クラスターをホモキラリティーの起源とする不斉自己触媒反応の推進を行う方針である。

次年度使用額が生じた理由

当初は2021年6月-7月にスウェーデンにて開催された国際学会に,実際に出席(in person)予定であったが,COVID19の世界的蔓延によりオンライン出席に変更して発表した。このため海外出張旅費支出額が変更となり,次年度使用額が生じた。次年度使用計画は,論文作成に係る経費(英文校閲料,コンピュータ関連,投稿料)等である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Asymmetric autocatalysis triggered by triglycine sulfate with switchable chirality by altering the direction of the applied electric fiel2021

    • 著者名/発表者名
      Tsuneomi Kawasaki, Yoshiyasu Kaimori, Seiya Shimada, Natsuki Hara, Susumu Sato, Kenta Suzuki, Toru Asahi, Arimasa Matsumoto, Kenso Soai
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 57 ページ: 5999-6002

    • DOI

      10.1039/D1CC02162A

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Asymmetric Autocatalysis as a Link Between Crystal Chirality and Highly Enantioenriched Organic Compounds2021

    • 著者名/発表者名
      Kenso Soai, Arimasa Matsumoto, Tsuneomi Kawasaki,
    • 雑誌名

      Israel Journal of Chemistry

      巻: 61 ページ: 507-516

    • DOI

      10.1002/ijch.202100047

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Circular Dichroism Spectroscopy of Catalyst Preequilibrium in Asymmetric Autocatalysis of Pyrimidyl Alkanol2021

    • 著者名/発表者名
      Arimasa Matsumoto, Ayame Tanaka, Yoshiyasu Kaimori, Natsuki Hara, Yuji Mikata, Kenso Soai
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 57 ページ: 11209-11212

    • DOI

      10.1039/d1cc04206h

    • 査読あり
  • [学会発表] Asymmetric Autocatalysis and the Elucidation of the Origin of Homochirality2021

    • 著者名/発表者名
      Kenso Soai
    • 学会等名
      Chiral Matter, Nobel Symposium 167
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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