研究成果の概要 |
ケイ素架橋のテトラインを加熱したところ、2種類の脱水素Diels-Alder反応が連続的に進行し、含ケイ素七環式化合物が得られた。本反応では、最初1,3-ジイン部分とアルキン部分の分子内環化により、ベンザイン中間体が生成し、さらにアリールアルキン部分との分子内環化により、縮合多環式化合物が得られる。一方、硫黄架橋1,8-ジインに対しニッケル触媒を作用すると、C-S結合の開裂を起点として、2つのアルキンの連続的分子内挿入が進行し、チオピラン環を含む四環式化合物が得られた。本反応は、配向基を用いない室温でのC-S結合の開裂を起点する数少ない反応例である。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
環境負荷の小さい合成変換反応の開発は、有機化学者に課せられた使命と言える。今回報告者は、原子効率が100%である新規な形式の連続反応により、縮合多環式化合物の効率合成を達成した。ケイ素架橋テトラインの反応で、2種の連続的脱水素Diels-Alder反応により含ケイ素七環式化合物を合成し、さらのこの環化体が高い1,3-ジエン活性を有することを見いだした。一方、硫黄架橋の1,8-ジインの反応では、Ni触媒を用いることにより室温でC-S結合の開裂、さらに連続的なアルキン挿入により含硫黄四環式化合物を合成し、さらのこの環化体がトルエン類の選択的空気酸化において、光触媒として機能することを見いだした。
|