研究課題/領域番号 |
19K05486
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
赤井 昭二 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (00322537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パンクラチスタチン / ニトロアルドール反応 / Henry反応 / アナログ / 抗腫瘍活性 |
研究実績の概要 |
令和2年度に引き続き、研究代表者が独自に開発したPST合成法を基軸に、A環アナログと2位ヒドロキシ基アナログの合成を継続した。しかしながら、所属機関ではコロナ禍で研究活動が長期間制限されたため、予定の試料数と量を合成するには至らなかった。結果的に得られた成果は、以下の通りである。 [2位ヒドロキシ基アナログ] 2位水酸基をメトキシ基で置き換えた2-OMe-PSTを合成し、2-エピ-PST(令和2年度に報告)と同様にA549(ヒト肺胞上皮腺癌)細胞に対して生物活性試験を実施した。その結果、2-OMe-PSTの細胞毒性は、約1/10と2-エピ-PSTと同程度に低下した。PSTは、三環が高い平面性をもつ分子構造で1,2,3位の水酸基が平面対して交互に垂直に突き出た方向に配置されており、分子を挟み込むような板状空間が受容体に存在しているものと推測される。2つの生物活性の結果(2-エピ,2-OMe-PST)からも2位を水素受容能の高いフッ素原子に置き換えることで、細胞毒性の向上が期待できるものと示唆される。このことから2-デオキシPSTと2-F-PSTを加えてより詳細な細胞毒性試験を行うことを目標とし、4つの試料の追合成を進めた。2-F-PSTの合成では、フッ素原子をもったニトロオレフィンを合成できたが、条件の最適化が課題となった。 [A環縮小・拡大アナログ] 令和2年度に合成できたA環が縮小された5-6-6員環誘導体の収率の改善と立体選択性の向上について、さらに検討したが、研究活動の制限のため時間が足りず、今のところ良い結果を得ることはできていない。 令和3年3月からコロナ禍での研究活動の制限は解除となり、また本研究課題の延長が認められたことから、本年度進められなかった検討を精力的に実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属機関では、令和2年度から続くコロナ禍の研究活動の制限で令和3年度(計画最終年度)に計画した大部分の実験を実施できなかった。このことが進捗の遅れの最大の理由である。令和3年3月から研究活動の制限は解除されたが、同時期に研究室の改修工事を行ったため、結果的に実験を行うことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
所属機関のコロナ禍での研究活動の制限は令和3年3月に解除され、今後はコロナ以前と同様に実験が行える状況となった。このことから、認めて頂いた延長期間で最終的な目標を達成できるよう、以下のように計画を変更した。 [1位/2位ヒドロキシ基アナログ] 2-F-PSTの合成を完了させ、2-デオキシ-PSTと共に生物活性試験を行う。また、これまでの生物活性試験の結果から2位にエポキシ基かオキセタニル基を導入したアナログの合成を計画した。これらのアナログは、代表者が報告している既存のルートの終盤の数工程の改変で実施できるため、計画段階での問題点はない。最終的に、合計4種化合物以上の生物活性試験を行い、総合的な評価を学術誌へ投稿できるようにする。 [A環縮小・拡大アナログ] 数グラム規模で実験を繰り返しA環の縮小した5-6-6員環骨格を合成し進めて行く。一方、拡大環7-6-6員環骨格の検討を行う。1C導入の条件については、有機塩基などを積極的に検討する。A環縮小あるいは拡大の、いずれか一方の誘導体合成を達成できるよう鋭意実験に取り組む。 計画全体が遅れたため、成果発表と論文発表を同時に行えるようデータの収集を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関では、令和2年度から継続されたコロナ禍の研究活動の制限のため、本年度(計画最終年度)は実質的にほとんどの実験を行なえなかった。そのため、試薬や消耗品の購入も少なく交付金もほとんど未執行となった。また、実質的に研究が進められなかったため、成果の発表や論文作成にかかる支出もなく、課題の延長申請に伴い予算も次年度使用となった。認められた延長期間を有効に活用して研究協力者1名とともに精力的に実験を進めて行く計画で、試薬や溶剤、消耗品費、シンポジウムの旅費として当初の計画に準じて使用する予定である。
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