研究課題/領域番号 |
19K05487
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
太田 哲男 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50213731)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子錯体 / ルテニウム / 触媒反応 |
研究実績の概要 |
均一系遷移金属錯体触媒の研究により高度化された金属周囲の環境を有したまま高分子に担持された「高分子遷移金属錯体」は不斉合成も含む精密有機合成反応の回収・再利用が可能なグリーンな触媒として利用される.また,担持体の高分子の種類により,基質の自発的な集積効果などにより均一系触媒を凌駕する反応効率や選択性を示すこともあるため,環境やコスト面からの興味だけでなく,学術的にも興味がもたれる.「高分子ルテニウム錯体」も,不斉触媒を含む多数の触媒反応に応用されている.これらの錯体は,高分子に担持した配位子と炭素環配位子をもつ錯体前駆体を反応させることにより合成されることが多い. 本研究の目的は,1)汎用性の高い「高分子ルテニウム錯体」の合成は可能か,2)低分子錯体同様に様々な錯体への変換が可能であるか,3)得られた「高分子ルテニウム錯体」が触媒前駆体として広く利用可能かどうか,を解明し,汎用性の高い高分子ルテニウム錯体の合成法を確立し,それを広く応用することにある. 本年度は、ルテニウムと配位子交換を起こしやすい電子密度の高い芳香族を持つ高分子化合物を合成し、電子求引性置換基を持つ芳香族を有するルテニウムダイマー錯体との配位子交換反応を検討した.そこでは不溶性高分子粒子の表面がルテニウムで着色したことから、ルテニウム高分子化合物が得られているとの推測がされた.さらに、その高分子錯体を触媒に用いる有機合成反応を検討した。水素移動型還元反応に上記高分子錯体を用いて触媒反応を試したところ、水素移動が進行していることが確認され.錯体が合成できているとの確証を得た.今後さらに、シクロペンタジエニル配位子をもつ高分子錯体の合成と触媒活性の検討を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子ルテニウム錯体の合成には成功しつつある。現在触媒反応への応用が可能であるかどうかの検討を行っており、ポジティブな成果が得られつつあると考えている.高分子錯体合成の確立を行うとともに、触媒活性が見られたことから、今後、反応に応じて、新たな配位子の共存による、選択性や反応性の向上を目指して、研究をまとめていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
高分子ルテニウム錯体の合成を確立する.また,触媒反応への適応を検討し,触媒反応に適当な配位子と組み合わせて高分子ルテニウム錯体の誘導を行う。その誘導により,より高い活性と選択性の発言を目指す.さらには,回収再利用の可能性を探る. 高分子担持ジエンと塩化ルテニウム水和物との反応により高分子ルテニウム錯体を構築する.また,電子求引性置換を持つ芳香族錯体と、高分子担持電子供与性置換基を持つ芳香族との置換反応を確立させ,より効率的な高分子錯体合成法の確立を行う. ホスフィン配位子,窒素配位子,カルベン配位子などを取り上げる.錯体合成は種々の配位子と高分子ルテニウム錯体を反応させ,構造解析を行う.一方,触媒開発は,系中で配位子と混合してそのまま触媒反応を検討し,その有効性を調査するところから始める.触媒反応としては,不斉水素移動型還元,オレフィンの異性化,C-H活性化やアルキンの水和など幅広く検討する.また,本研究計画では,触媒反応後の金属の流出に加え,固定化されていない配位子の流出についても調査する.それにより,本法の真の有効性を吟味する.また,触媒開発の結果は錯体合成へとフィードバックし,錯体開発がどの部分に注力するかを明らかにする.逆に,錯体合成は構造決定した錯体を触媒開発に提供し,錯体合成・触媒開発が有機的に繋がり,相乗的に研究を加速化できるように研究体制を整え,研究計画を実現する.
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