本研究はビブサニン類の3種全てのサブタイプを合成可能にする系統的な合成法を確立し、構造と神経栄養因子様活性との相関を解明する有機合成化学を中心 とする研究である。本合成研究では、ビブサン型ジテルペンに共通する四級炭素を含む二連続不斉炭素の構築法、および共通中間体から前例のない新規な各サブ ユニットへの骨格変換法を開発、全てのビブサニン類へ応用可能な系統的合成を確立する計画である。ビブサン型ジテルペンに属するネオビブサニンは、強力な 神経栄養因子様活性を示すことから神経変性疾患治療薬のリード化合物として期待されている。しかし、ビブサニン類は植物中の微量成分であること、また、そ の一般的な合成法が確立されていないことから、活性発現機構やサブタイプ間での活性の違いについては未だ不明である。本研究では、ネオビブサニンを基盤と する神経変性疾患治療薬の開発を最終目標として、不斉炭素の立体化学を制御したビブサン型ジテルペンの系統的合成法を確立するとともにサブタイプ間での活性評価をおこなうことにした。計画に従い課題を実施した結果、不斉四級炭素を確立する新規エナンチオ選択的アルドール反応を開発することに成功した。また、隣接する三級炭素の不斉導入法を利用して、ビブサン型ジテルペンの合成研究に取り組んだ。不斉アルドール反応で共通合成中間体を合成したのち、官能基変換をおこなうことでネオビブサニンやスピロビブサニンに共通する側鎖部をジアステレオ選択的に導入することに成功した。さらにカルボニル基アルファ位置換反応をおこない、酸素官能基の導入およびアルキル基の導入にも成功した。以上の結果より、3種のサブタイプ含まれるビブサニン特有の不斉四級炭素を構築することに成功し、またビブサン型ジテルペン類の共通合成中間体の合成法を確立することができた。
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