研究課題/領域番号 |
19K05489
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松原 公紀 福岡大学, 理学部, 教授 (00294984)
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研究分担者 |
古賀 裕二 福岡大学, 理学部, 助教 (60373148)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニッケル錯体 / 均一系触媒反応 / クロスカップリング / 反応機構 / 有機金属錯体 |
研究実績の概要 |
本研究は①ニッケル1価錯体および3価錯体が触媒反応の活性中間体となりうることを実験的に証明すること、②ニッケル1価錯体の反応性の解明と、得られる生成物の構造を解明すること、③②の知見をもとに新しい触媒反応を設計・開発すること、を目的として研究を推進します。加えて、④安定なニッケル錯体から活性なニッケル1価錯体が触媒反応中で生成する反応経路を提案する予定です。 ①研究初年度の研究成果において、3価のニッケル錯体が中間体として生成する強力な実験的証拠を得たと考えており、今後は③の反応検討を通して新たな触媒反応における反応機構の解明検討を行う予定です。 ②新たな触媒反応を開発しようとする中で、アセチレンのCHをリチウムで置換したアセチリド化合物がニッケル1価ハロゲン化錯体と反応し、新たにニッケル1価アセチリド錯体となることを明らかにしました。残念ながらこの錯体は非常に安定であるため、触媒反応への展開は難しいことがわかりました。 ③一方、有機亜鉛化合物を用いた根岸クロスカップリング反応において、特にベンジル亜鉛化合物を用いた際にハロゲン化アリールとクロスカップリング生成物を良好に与えることを明らかにしています。学生の自宅待機期間が長く、十分な検討が進んでいませんので、今後条件の最適化、反応性の解明などを進める予定です。 ④これまでより嵩高い配位子を持つ類似のニッケル錯体を合成し、触媒反応への応用を計画していましたが、これについても十分な検討ができていません。今後の課題としています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
緊急事態宣言が発出される状況で、学生の自宅待機期間が長く続いたことから、想定していた十分な研究成果は得られていません。 具体的には、概要で示しましたように、③および④の研究において、③では根岸クロスカップリング反応の反応条件検討、反応性の解明までを昨年度までに行い、今年度はニッケル1価錯体がどのように関与しているのか解明する予定でしたが、現在のところ、反応条件検討の途中の段階です。④では、配位子の構造の異なる一連のニッケル錯体について合成することに成功していますが、触媒反応への適用例がまだまだ少なく、配位子の違いによる反応性の違いについて議論できるまでに至っていません。今後はそれらを踏まえた研究を推進する予定です。
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今後の研究の推進方策 |
学生の研究環境は幾分改善しているものの、4月以降緊急事態宣言が再び発出される状況で、100%ではなく8割位のスピードで徐々に効率を高めていきたいと考えています。 ニッケル1価錯体を用いた根岸クロスカップリング反応の反応機構研究を行った例はこれまでにもいくつかあありますが、いずれも計算化学的手法を用いたものしかなく、本研究ではこれまでの実験的手法を踏襲し、実験的な解明を目指しています。ただし、場合によっては計算化学的なアプローチによる知見を使ったサポートも必要に応じて柔軟に行いたいと考えています。
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