研究課題/領域番号 |
19K05494
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大坪 主弥 京都大学, 理学研究科, 助教 (90601005)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノチューブ / 疎水性空間 / 水クラスター / プロトン伝導 |
研究実績の概要 |
近年我々はボトムアップ合成を基盤とした金属-有機ナノチューブ(MONTs)の創製に成功した。このMONTsにおいては、疎水性内空間に捕捉された水分子がバルク状態とは異なる特異なクラスター構造を形成し、高プロトン伝導性を示すことなどを明らかにした。一方で、非常に狭い疎水性空間内に閉じ込められた水分子がバルク状態とは全く異なる相挙動や非常に高いプロトン伝導性を示すことについて古くから関心が集まっているものの、その実証についてはカーボンナノチューブを含め理論的側面のみが先行しており、実験的な実証に乏しい。本研究課題においては実験的なボトムアップ合成に立脚したプロトン伝導性MONTsのライブラリ構築、直径数ナノメートル以下の狭い疎水性内空間で実現する高速プロトン輸送現象を中心とした機能材料創成、輸送機構の解明と材料設計指針を得ることを目的とした。 初年度となる2019年度は、新規に合成したMONTにおいて疎水性空間における特異な水クラスター構造を単結晶X線結晶構造解析により明らかにし、水分子クラスター間の水素結合ネットワークを介した超プロトン伝導性の発現について、交流インピーダンス測定、固体NMRスペクトル測定、分割統治型密度汎関数強束縛(DC-DFTB)法を用いた理論計算から多角的に明らかにすることに成功した。また、界面活性剤アニオンを用いた金属錯体ナノチューブを合成し、ナノチューブ一本を溶液中で取り出すことが可能になり、透過型電子顕微鏡観察から構造を確認することにも成功した。さらには、柔軟な有機配位子を有するMONTを新規に合成し、有機配位子の剛直性と内空間の効果がもたらすプロトン伝導性の変化について実験的に明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属錯体ナノチューブの疎水性空間における超プロトン伝導性の発現機構について、実験・理論の両面から明らかにすることに成功し、さらには有機配位子がもたらす内空間の変化とプロトン伝導性の変化について指針を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ボトムアップ合成手法を生かした金属錯体ナノチューブのライブラリーの充実を図るとともに、開口径を系統的に制御した種々のナノチューブにおける水クラスターついて実験的(X線結晶構造解析・水吸着解析・熱分析・固体核磁気共鳴・軟X線分光・中性子回折による核密度解析)に可視化するとともに、開口径とクラスターサイズ・プロトン輸送特性等の相関について明らかにする。実験データと理論研究との詳細な比較から実在する物質系を舞台としてこれらの相関を体系化し、高プロトン伝導性を発現する条件を最適化することで疎水性空間を使用したプロトン輸送材料の構造設計指針を提案することを目指していく。
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