研究課題/領域番号 |
19K05497
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉本 秀樹 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00315970)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属錯体 / ジアミン / オスミウム錯体 / アミノ化反応 |
研究実績の概要 |
シン―ジアミンは多くの医薬品や生理活性をもつ天然物の構成要素の一部であり、簡便な合成法の確立が望まれているが、シン―ジアミンを選択的に一段階で合成する触媒系は未だに報告されていない。本申請者は、オスミウムが同族の鉄やルテニウムよりも酸性が強く、配位子原子と強い共有結合性を持つことを活用し、アルケンのシン―ジオール化を触媒する鉄酵素のオスミウム(V)ーオキソヒドロキソモデル錯体を合成し、過酸化水素を再酸化剤とする触媒的なアルケンのシン―ジオール化反応を構築している。本錯体のキレート構造は非常に安定であり、強酸性や強アルカリ性 の条件でも分解しない。さらに、鉄やルテニウムを持つモデル錯体とは大きく異なり、本シンジオール化反応は、様々な種類のアルケンに高収率・高選択的で進行する。本酸化活性種は、本申請者の全くのオリジナルであり、本成果を土台として、高効率なアルケンのジアミノ化反応を、錯体化学を基盤として展開できる。OsO4と一級アミンとの反応により、イミド錯体OsOx(NR)y (x + y = 4)が生成することが報告されている方法を応用し、すでに申請者が合成したオキソ-ヒドロキソーオスミウム(V)錯体と一級アミンとの脱水反応により、イミドーアミナートーオスミウム(V)錯体のを合成をこころみた。アミン置換基(R)の電子的・立体的性質により、目的錯体への構造変化や生成物の安定性を制御した。脱水反応をマススペクトルにより追跡するなどして合成条件を設定し、目的錯体を単離し、分光学的諸性質を解明すると共に単結晶の作成を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、「高原子価金属イミド錯体の生成を鍵とするアルケンのシンジアミノ化反応の構築」と題して、金属酵素モデルを土台としてモデル錯体を合成し、アミン配位子を金属中心に導入することから始め、機能発現(特に 、化学的反応性)まで展開することを計画している。 人工金属酵素の開発では、鎖状型四座配位子を用いてrieske dioxygenase不安定化学種のモデル錯体を合成し、その配位子が与える幾 何構造の違いにより、アルケンのジオール化活性を制御することに成功した。酵素に見られるような異なる電子状態を有する金属-オ キソ結合を2つ持つ金属錯体の合成にも成功し、配位子交換反応が著しく早くなることを見出した。さらに、人工金属酵素モデルのア ルケンのジアミノ化触媒への展開を目的として、金属への種々のアミンの配位を検討し、速度論的知見により、第一級アミンがアミン 源として適していると結論した。 このように、オスミウムにアミンが配位することまで研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、溶液中で生成させたアミン錯体を単離し、構造決定すると共に、化学的酸化あるいは電子移動酸化により、イミドーアミナートーオスミウム(V)錯体まで変換できるかを調べる。生成が確認された計では、種々のアルケンとをアセトンやジクロロメタンなどの弱配位性有機溶媒中で反応させ、下図右のジアミン錯体が生成するかどうかを紫外可視吸収スペクトルやESI-マススペクトルなどにより追跡する。イミドーアミナートーオスミウム(V)錯体のアミン置換基(R)の電子的性質を、アルケンのジアミノ化の収率から調べてオスミウム錯体がアルケンに対して求電子性か求核性を示すのかを明らかとする。同時に、アルケンの置換基の電子的性質も変化させたジアミノ化反応もおこない、様々なジアミンを持つオスミウム(III)錯体を合成し、結晶構造を決定し、オスミウム(V)錯体から(III)価錯体へと還元されたことによる金属中心構造の変化を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎感染防止のために、二月と三月の二ヶ月間研究活動の自粛や学会参加のとりやめが相次ぎ、繰越が生じた。 予定していた実験を今年度おこなうとともに、未発表の成果を学会や研究会で発表することに使用する。
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