二酸化炭素(CO2)や酸化窒素(N2O)は,地球温暖化の原因となる温室効果ガスである.N2Oは二酸化炭素やメタンなどの他の温室効果ガスと比較して大気中の濃度は低いけれども,二酸化炭素の300倍を超える地球温暖化係数を有し,長寿命な上に成層圏のオゾン層破壊物質でもある.しかも,大気中のN2O濃度は1750年の270 ppbから2018年の331 ppbまでに20 %以上増加し,2050年までに倍増すると言われている.増加の主な原因は,農業に用いられる窒素含有肥料の使用や自動車の排出ガス,硝酸やアジピン酸の工業的生産など,人間の活動によるN2O排出量が増加したことによる.今後の人口増加をふまえると農業活動や産業活動の拡大は避けて通れない道であり,N2Oの排出量の抑制や大気中のN2Oを除去することは人類にとって喫緊で不可欠な課題である.これまで,塩基性のサイトをもたないNaCaA型ゼオライトを用いることによって,室温・400 ppm 程度の低圧条件下でCO2を選択的に吸着する現象を見出し,放射光を利用したin situ 遠赤外線吸収(Far-IR)測定のデータを基に,その相互作用モデルを提案してきた.本研究ではCO2と等電子構造を有するN2Oも含めて研究を行った.特にCO2分子に対しては,室温,400 ppmから人体に害となる5000 ppm程度の低圧の条件下で選択的かつ高吸着特性を有する物質開拓を行い,その吸着モデルの確立をめざした.また,前述したようにN2OはCO2と類似した構造を有することから,提案したCO2吸着モデルの妥当性を検討すると共に,N2Oを高効率な吸着分離・分解過程による削減への可能性を検討した.
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