研究課題/領域番号 |
19K05509
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
田 旺帝 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (40344501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Metal Organic Framework / SURMOF / XAFS / Nanoparticles |
研究実績の概要 |
本研究は、配向が制御された多孔性配位高分子(PCP/MOF)薄膜を集積化したSurface-mounted MOF (SURMOF)を用い、SURMOFに導入したナノ粒子の構造を,放射光X線吸収分光 (XAFS)により精密に決定する。こうして得られるPCP/MOFにおけるナノ粒子(NP)の構造に関する基礎的知見は,PCP/MOFの機能複合化をさらに加速できると期待している。 本年度は、1)単結晶表面におけるSURMOF合成に重点をおきながら、2)簡易型の低温偏光全反射蛍光XAFS(Low-temperature PTRF-XAFS)測定装置の開発を進めた。 1)については、TiO2(110)表面に酸素還元反応に活性を示すMn, Co-MOF薄膜の合成を試みた。MnやCo金属イオン濃度や基板の修飾、温度などを検討した結果、TiO2(110)表面ではMn-MOF薄膜は不安定であるのに対し、Co-MOF薄膜は比較的に安定であることがわかった。今後、合成条件の最適化とともに、Mn/Co-MOF薄膜の合成を試みる。さらに、MOF細孔へのナノ粒子の導入条件を探索する。2)については、安価で取り扱いが容易な液体窒素を冷媒にした超小型LT-PTRFXAFS測定装置の開発に取り組んだ。その結果、試作段階ではあるが、冷却開始から30分程度で試料の温度を80K付近までに下げることに成功し、設計目標を達成した。さらに、低温測定によるXAFSスペクトルへの影響を検証するため、Si(111)基板に高分散させたAuナノ粒子の構造を計測した。その結果、室温測定に比べ、XAFSスペクトルのS/Nが二桁ほど改善できる可能性が見出された。今後、より安定な低温XAFS測定ができるよう温度調整機構及び位置合わせ機構などの改良に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、1)単結晶表面におけるSURMOF合成に重点をおきながら、2)簡易型の低温偏光全反射蛍光XAFS(Low-temperature PTRF-XAFS)測定装置の開発を進めた。 1)については、TiO2(110)表面に酸素還元反応に活性を示すMn, Co-MOF薄膜の合成を試みた。MnやCo金属イオン濃度や基板の修飾、温度などを検討した結果、TiO2(110)表面ではMn-MOF薄膜は不安定であるのに対し、Co-MOF薄膜は比較的に安定であることがわかった。今後、合成条件の最適化とともに、MOF細孔へのナノ粒子の導入条件を探索する。 2)については、液体窒素を冷媒にした超小型LT-PTRFXAFS測定装置の試作と評価を行った。試作段階ではあるが、冷却開始から30分程度で試料の温度を80K付近までに下げることに成功し、設計目標を達成した。さらに、80K付近でSi(111)基板に高分散させたAuナノ粒子のLT-PTRF-XAFSを計測した。その結果、室温測定に比べ、XAFSスペクトルのS/Nが二桁ほど改善できる可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、引き続き、1)単結晶表面におけるSURMOF合成に重点をおきながら、2)簡易型低温偏光全反射蛍光XAFS(Low-temperature PTRF-XAFS)による精密構造解析に取り組む。 1)については、TiO2(110)やSi(100)などの単結晶基板の他にFTOやグラファイト基板にHKUST-1やMOF-2、MOF-5、MIL-101、UiO-67、NU1000など、多様なMOF薄膜の合成に取り組む。 2)については、引き続き、装置の改良を進めながら、複数の金属種を含むMOF薄膜のXAFS測定に取り組む。これにより、異なる金属種の吸収端からの複合的な構造情報が得られ、より精密な構造解析ができると期待する。
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