研究課題/領域番号 |
19K05511
|
研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
森本 樹 東京工科大学, 工学部, 准教授 (40452015)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光触媒 / 二酸化炭素還元 / 多核錯体 |
研究実績の概要 |
シュウ酸等の複数の炭素原子を含む二酸化炭素(CO2)還元生成物を与える金属錯体光触媒の開発を目的として、様々な架橋部を有する2核および3核レニウムトリカルボニル錯体を設計・合成した。まず、剛直な芳香環を架橋部として、2個または3個のビピリジン配位子をもつ様々な多座配位子を合成し、それらを用いて、対応するレニウム多核錯体を種々合成した。得られた多核錯体について、各種分光学的手法や電気化学測定により解析したところ、いずれの多核錯体も参照となる単核錯体と同様の吸収スペクトル、発光スペクトル、発光量子収率、励起寿命、酸化還元電位等を示した。しかし電気化学的CO2還元において、いくつかの多核錯体が参照となる単核錯体と比べて約0.4 V低いCO2還元の過電圧を示すことがわかった。また、光触媒的CO2還元反応においては、それらの多核錯体を光触媒として用いるとCO2がCOに選択的に還元され、単核錯体を用いた場合に比べて高いCO生成の量子収率を示すことも明らかになった。さらに、可視光を効率よく吸収する光増感剤を共存させてCO2還元反応を行うことで、最大で単核錯体の約4倍の量子収率を示すことがわかった。高いCO2還元性能を示す多核錯体の構造特性を詳細に比較検討した結果、金属中心が互いにある程度まで近接した多核錯体が電気化学的また光化学的にCO2還元をより促進することを見出した。このことはCO2還元を担う金属中心間の距離がその性能を大きく左右する要因であることを強く示唆しており、CO2還元金属錯体光触媒の設計指針の一つとして期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近接した金属中心をもつ多核錯体が電気化学的また光化学的にCO2還元を促進できることを見出したものの、当初の目的である複数の炭素原子を含むCO2還元生成物を与える光触媒系をまだ開発できていないため。
|
今後の研究の推進方策 |
シュウ酸を含め、反応溶液中に存在する複数の炭素原子を含む化合物を迅速に検出・定量できるシステムを導入した。これまでに得た多核錯体を用いて様々な反応条件でCO2還元反応を行い、このシステムを利用して、目的のCO2還元生成物を生成する光触媒系の探索を効率よく行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度に新規合成を予定していた化合物について、当初の予定よりも順調にその合成が完了し、物品費の一部を結果的に使用しなかった。次年度は今年度以上に合成の比率が増える見通しであるため、合成スキームの短縮に資する試薬等の消耗品の購入に使用する予定である。
|