研究課題
最終年度では、複数の炭素原子を含む化合物を高効率に生産できる複合型光触媒の開発を目指し、立体配座を規制した種々のレニウム3核錯体を設計・合成した。合成した多核錯体は、参照となる単核錯体と同様の光物性や電気化学特性を示した。一方で、光触媒的二酸化炭素(CO2)還元反応においては、配座があまり規制されていない錯体よりも、規制されている錯体の方が、CO2を一酸化炭素(CO)に効率よく還元できることを明らかにした。これは、構造の規制によって、分子内の2カ所の錯体部が協同してCO2を還元することで、多電子還元反応が促進されたものと考えられる。本研究課題では、複数の炭素原子を含む化合物を生成する光触媒系を目指して、多電子を駆動して還元反応を推進でき、近接した金属中心を持つレニウム2核および3核錯体に基づく新たな光触媒の開発を行った。多電子を駆動する分子素子の構築については、複数の電子を安定に蓄積できる電子アクセプターのオリゴマーを設計し、実際に二量体の合成・単離に成功した。多電子を安定的に貯蔵しうることが電気化学測定により示唆されたと同時に、分光測定から強発光性を示すことも見出した。一方、触媒部の構築については、金属中心間距離や立体配座を規制した多核錯体を種々合成した。複数の炭素原子を含む化合物を生成する光触媒を見出せなかったものの、特定の多核錯体が電気化学的また光化学的にCO2をCOに効率よく還元することを明らかにした。さらに、CO2還元を担う金属中心間の距離や相対配置が、その効率化に影響していることが強く示唆され、CO2還元金属錯体光触媒の設計指針の一つを明らかにできた。
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