研究課題/領域番号 |
19K05513
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大久保 貴志 近畿大学, 理工学部, 教授 (90322677)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 配位高分子 / 有機薄膜太陽電池 |
研究実績の概要 |
有機薄膜太陽電池は環境に優しい軽くフレキシブルな太陽電池であり、ロール・ツー・ロールなどの低温印刷プロセスを利用することで安価に大量生産が可能である。そのため、将来的にはユビキタスな電源装置としての幅広い用途への活用が期待されている。しかしながら、現状ではその光電変換効率はシリコン薄膜太陽電池の半分以下であり、実用化に向けて更なるブレークスルーが必要である。そこで、本研究では有機薄膜太陽電池の高効率化を実現するために、金属錯体集合体である配位高分子を利用した新たな有機薄膜太陽電池の開発を目指している。我々はこれまで本研究で合成した導電性配位高分子が有機薄膜太陽電池のバッファ層として機能することを見いだしている。本研究課題では新たな導電性配位高分子の開発と導電性配位高分子を用いた有機薄膜太陽電池の開発を目的として研究を行っている。今年度は特にジチオベンゼンカルボン酸を配位子とした新規導電性配位高分子の合成やヘキサアザトリフェニレン誘導体を配位子とした銅(I)配位高分子をバッファ層とした有機薄膜太陽電池の作製および評価などを行った。具体的には、PTB7-Th:PCBMを活性層とした有機薄膜太陽電池においてバッファ層として導電性配位高分子[CumBrm(HAT-CN6)]n(m = 3 or 6)を用いた太陽電池を作製した。この中でm = 6の素子は酸化モリブデンMoO3をバッファ層にした素子よりも高い短絡電流密度とそれに伴う高い光電変換効率を示した。また、HAT-(CN)6もしくはCuBrをバッファ層とした太陽電池を作製し、上記の導電性配位高分子を用いたものと比較したところ明らかに導電性配位高分子を用いた薄膜太陽電池の方が効率が高く、導電性配位高分子の有用性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究でハロゲン化銅(I)とヘキサアザトリフェニレン誘導体からなる導電性配位高分子が有機薄膜太陽電池のバッファ層として従来より広く使われている酸化モリブデンMoO3よりも優れた材料になり得ることが明らかになった。ただし、実際は成膜条件に非常にシビアであり今後有機薄膜太陽電池のバッファ層として最適条件を探し出す必要がある。また、ハロゲン化銅(I)とヘキサアザトリフェニレン誘導体の混合比によっても性能が変化するため、更なる素子作製条件の最適化が必要であると考えているものの、概ね研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで行ってきたハロゲン化銅(I)とヘキサアザトリフェニレン誘導体からなる導電性配位高分子を用いた薄膜太陽電池の高効率化に加えて、新たな配位高分子の開発が必要であると考えている。特に導電性と発光特性を兼ね備えた配位高分子に関しては、バッファ層のみならず、薄膜太陽電池の活性層としても利用可能であると考えている。従って、上記の薄膜太陽電池の高効率化に加えて、薄膜太陽電池の活性層として利用可能な配位高分子の開発も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は本研究を進めるうえで予算を丁度使い切ることができる消耗品等がなかったために12,293円分次年度使用額が生じてしまった。今年度は繰り越し額の12,293円に不足する分を今年度予算から加えて有機薄膜太陽電池用の半導体材料を購入する予定である。
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