研究課題/領域番号 |
19K05514
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
満身 稔 岡山理科大学, 理学部, 教授 (20295752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多孔性金属錯体 / 光電荷分離 / アクセプター内包多孔性金属ポルフィリン錯体 / スピン反転 / フラーレン |
研究実績の概要 |
金属-有機構造体(MOFs)や多孔性配位高分子(PCPs)とよばれる多孔性金属錯体は,光捕集を担う色素が高秩序で配列することによって高効率の光捕集と励起エネルギーの輸送が期待でき,近年,新たな光捕集システムとして注目されている.しかしながら,光励起によって生じた励起子はすぐに失活するので,光エネルギーを電気や化学エネルギーとして取り出すには,光電荷分離状態を利用することが重要である.励起状態にある光電荷分離状態から,電気エネルギーを取り出せば光電変換システムとなり,化学エネルギーを取り出せば人工光合成や様々な電子移動触媒となる.したがって,多孔性金属錯体に基づく光電荷分離システムは様々な用途で利用可能な光エネルギー変換材料を創製でき,エネルギー問題の軽減に貢献できると期待される.そこで我々は,電子アクセプターを細孔内に内包した多孔性金属ポルフリン錯体に基づく光電荷分離システムの創製を目指して,①自己集合による格子形成が可能な拡張π共役多孔性亜鉛ポルフィリン錯体に基づくアクセプター内包多孔性金属ポルフリン錯体,②項間交差によるスピン反転を示す金属ポルフィリン錯体に基づくアクセプタ包接金属ポルフリン錯体について研究を行っている.①では,2種類の新規拡張π共役多孔性亜鉛ポルフィリン錯体とそのダイマーの合成法を検討し,これらの錯体を単離した.さらに,これらの錯体とC60との共結晶化を行ったところ,ポルフィリンダイマーとの組み合わせで,錯体がつくるヘリンボーンタイプとバスケットウェーブタイプの構造中にC60を内包した多孔性亜鉛ポルフィリンダイマーの結晶化とX線結晶構造解析に成功した.②では,白金ポルフィリン錯体[Pt(F20TPP)] とC60が3:2の比でπスタックし,ハニカムシート状の二次元相互作用をもつC60包接白金ポルフィリン錯体の結晶化とX線結晶構造解析に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題の遂行において鍵となのは,研究対象とするアクセプターを内包した金属ポルフィリン錯体を実際に単離することができるかどうかにかかっている.幸い,昨年度実施した研究において,①では,2種類の新規拡張π共役多孔性亜鉛ポルフィリン錯体とそのダイマーの単離,さらに,多孔性亜鉛ポルフィリンダイマーのつくるヘリンボーンタイプとバスケットウェーブタイプの構造中にC60を内包したC60内包多孔性亜鉛ポルフィリンダイマーの結晶化とX線結晶構造解析に成功した.また,②では,ハニカムシート状の二次元相互作用をもつC60包接白金ポルフィリン錯体の結晶化とX線結晶構造解析に成功した.これらの結果をもとに,現在までの進捗状況は概ね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
研究内容①π共役多孔性亜鉛ポルフィリン錯体に基づくアクセプター内包多孔性金属ポルフリン錯体,②項間交差によるスピン反転を示す金属ポルフィリン錯体に基づくアクセプタ包接金属ポルフリン錯体. ①では,2種類の新規拡張π共役多孔性亜鉛ポルフィリン錯体とそのダイマーについて,引き続きC60や他の電子アクセプターとの共結晶化を検討する.また,これまで合成した2種類の新規拡張π共役多孔性亜鉛ポルフィリン錯体とそのダイマー,ならびにそれらのC60内包多孔性亜鉛ポルフリン錯体について光物性を詳細に調べる.さらに,C60内包錯体については,過渡吸収分光法により光電荷分離について評価を行う. ②では,C60包接白金ポルフィリン錯体の光物性の詳細を調べるとともに,過渡吸収分光法により光電荷分離を評価する.また,他の電子アクセプターとの共結晶化や,パラジウムポルフィリン錯体を用いて,C60包接パラジウムポルフィリン錯体の共結晶化を検討する.さらに,①,②で得られる結果をフィードバックして,さらなる分子設計と合成・結晶化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度,本研究を遂行するために必要な電気化学アナライザーが故障し,また,比較的高価なクロマト管を破損してしまった.研究遂行のため昨年度中に修理する必要があり,20万円の前倒し請求を行った.しかしながら,当初,予定していた修理費用より安く修理していただくことができたので,8,050円の次年度使用額が生じた.本来は今年度の予算であり,研究遂行のため適切に使用する.
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