我々は,光エネルギー変換が可能な光電荷分離システムの創製を目指して,①自己集合による格子形成が可能な拡張π共役亜鉛ポルフィリン錯体に基づくアクセプター内包多孔性金属ポルフィリン錯体,②項間交差によるスピン反転を示す金属ポルフィリン錯体に基づくアクセプター包接金属ポルフリン錯体の開発について研究を行った. ①では,これまでフェニル基を導入した亜鉛ポルフィリンダイマーZnPD_222を用いて合成したC60内包多孔性亜鉛ポルフリンダイマーZnPD_222・C60-B formを合成している.今年度は,同じくフェニル基を導入し架橋エチニル基の数の異なる亜鉛ポルフィリンダイマーZnPD_121を新規に合成し,ZnPD_121・C60-A formおよびZnPD_121・C60・コラニュレン-B formの結晶化とX線結晶構想解析に成功した.これらのC60内包多孔性亜鉛ポルフリンダイマーとその原料錯体である亜鉛ポルフリンダイマーについて,過渡吸収スペクトル測定を行った.原料錯体である亜鉛ポルフリンダイマーでは,1250 nm付近に励起一重項状態による吸収が観測された.これに対し,C60内包多孔性亜鉛ポルフリンダイマーでは,ZnPDとC60のラジカル種に帰属される強い吸収がそれぞれ1000 nmと1080 nm付近に観測された.現在,光電荷分離寿命を評価するために解析に用いるモデルの再検討を行なっている.また,ZnPD_121・C60-A formについて光レドックス触媒としての検討を行い,光水素発生を観測した. ②では,C60包接白金ポルフィリン錯体[Pt(F20TPP)]3(C60)2と同じ結晶構造を持つパラジウム錯体[Pd(F20TPP)]3(C60)2の結晶化と結晶構造解析に成功した.さらに,これらのC60包接金属ポルフィリン錯体について過渡吸収スペクトル測定を行った.現在,光電荷分離を評価するために解析を行なっている.
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