研究課題/領域番号 |
19K05515
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
上口 賢 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (10321746)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クラスター / 担持触媒 / 不均一系反応 / 窒素分子活性化 / アンモニア合成 |
研究実績の概要 |
空気中の窒素分子を固定化しアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法は高温・高圧条件を要するため、同手法に頼らずに窒素分子を固定化できる新しい触媒系の開拓が急務である。これまでにハロゲンを配位子とする分子性多核金属クラスター(ハライドクラスター)をシリカ系担体に担持後、加熱活性化して得られる触媒がアンモニア合成反応を行うことを世界で初めて見いだした。今年度は触媒活性のさらなる向上に向け、クラスターを構成する金属やハロゲンの種類および担体の種類の適切な組み合わせを検討した。クラスターについては、ハライドクラスターを構成する3~7族の19の金属種のうち、窒素分子の活性化反応の報告例があるものや入手性・コスト等の面で優位なものを選び、塩化物および臭化物のクラスターを用いて反応を試みた結果、モリブデン(Mo)の塩化物クラスターを用いると高い活性が得られることを見いだした。また、担体については、1 nm程度の細孔径を有するゼオライト担体が高い活性を与えることを見いだした。400 ℃, 10~20気圧における時間あたりのアンモニア生成量は従来のMo担持触媒に比べ1桁程度高い。上記ゼオライト担持Mo塩化物クラスターでは、担持後および活性化後、アンモニア合成反応後を通じMoクラスターのサイズが1 nmから大きくは変わらないことが電子顕微鏡観察や放射光分析から示唆された。極微サイズのクラスターが同程度の大きさの細孔に内包されることによりアンモニア合成反応中も凝集せずに高分散担持状態を維持するため、これまでの担持Mo触媒にはない高活性のアンモニア合成反応が進行することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はハライドクラスターを利用したアンモニア合成触媒に関し、クラスターを構成する金属種やハロゲン種、さらに担体種の最適な組み合わせを調べること、およびクラスター構造と触媒活性との関連を明らかにすることを目的としていた。研究が予定通り進んだため、おおむね順調に進んでいると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はアンモニア合成のさらなる高効率化を目指す。アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属など様々な金属を添加した担体にMo塩化物クラスターを担持し反応を試みる。必要に応じ触媒の電子顕微鏡観察や放射光分析も行い、クラスターが凝集することなく高活性を示す添加金属の組み合わせや触媒の活性化条件、反応条件を検討する。さらにDFT計算による反応機構や触媒活性種の解明も行い、得られた知見のフィードバックによりさらなる活性向上や反応温度の低減化を目指す。
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