研究課題/領域番号 |
19K05520
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 正康 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (70226554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 表面プラズモン共鳴 / 表面プラズモン増強蛍光 / 長距離伝搬表面プラズモン / バイオセンサ / 細胞分析 |
研究実績の概要 |
本年度は水と屈折率がほぼ等しいフッ素樹脂Cytop(R)層を挿入した金薄膜SPR(表面プラズモン共鳴)センサチップを作製することで、従来金薄膜では不可能であった500nm以下の光源を用いたSPR測定を実現することを目的とした。 まずCytop層を作製するに当たり、層の形成に用いるCytopの濃度(原液9%)を検討した。その結果Cytop濃度が高いほど、SPR曲線が鋭くなり、より高感度にSPR測定できることがわかった。8%以上ではCytopの粘性が高くなり膜の形成が困難だったことから7%を最適値とした。しかし、濃度が高くなるとSPR角は低角度側にシフトし、SPR測定が困難となることが分かった。そこで金薄膜の膜厚を最適化することでSPR角を測定しやすい角度にした。金膜厚が厚いほどSPR角は高角度側にシフトすることが確認でき、Cytop濃度7%のとき、最適な金膜厚は40nmであった。 さらにセンサチップの安定性向上のために金薄膜とCytop層の間にチタン層を2nm挿入した。これらの条件で作製することで、これまでに例のない490nmという短い波長の光源でシャープなSPR曲線が得られる新しいSPRセンサチップの開発に成功した。 また来年度からのSPEF(表面プラズモン増強蛍光)画像の取得に向け、本年度経費で冷却CCDカメラを導入し、冷却によりノイズを低減するとともに、複数画素を1画素とみなすビニング処理の採用により信号増幅を図り、従来と比べて、より高感度で鮮明な蛍光画像が取得できるようになった。 以上のように令和元年度に予定していた研究をほぼ計画通り遂行でき順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度に予定していた研究計画についてほぼ予定通りに遂行できた。Cytop層の挿入により490nmで鋭いSPR曲線が得られる新しいSPRセンサチップが開発された意義は大きい。また本課題の経費で導入した冷却CCDカメラの導入により、(1)冷却によるノイズの低減、(2)ビニング処理による信号増幅、が実現でき、従来と比べて、より高感度で鮮明な蛍光画像が取得できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進展しており、今後もほぼ計画通りに推進していく。具体的には、SPEF画像が、より高感度かつ鮮明に得られる測定条件の検討、SPR画像とSPEF画像のハイブリッド化手法の検討を行うと共に、細胞応答解析のための実験系の準備を進めていく。
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