令和2年度の研究によりCytop上の金薄膜が水溶液中で不安定な原因はイオンスパッタリングによりCytop層表面が損傷を受けるためであることが分かった。そこで真空蒸着により金薄膜を形成したところ水溶液中での安定性が向上した。しかしSPR角が装置の測定限界である49度と低く、全反射せずに金属薄膜のピンホールなどから透過してくる光の影響が見られ、それに隠されてSPEF蛍光が明確に観察できないという問題が残った。 そこで最終年度は、まずCytop層及び金薄膜の膜厚等を検討し、SPR角を高角度側にシフトさせる条件を検討した。しかしSPR角の高角度側へのシフトと十分なSPR吸収を両立できる膜厚条件は作製可能な範囲では見いだせなかった。そこで銀薄膜層の採用が不可欠と考えられた。Cytopの上に銀薄膜を形成し、その上に水溶液中での安定性を保つため、保護膜として薄い金薄膜を形成した新たなSPRセンサチップを開発した。このセンサチップについて各層の膜厚を最適化したところ、SPR角を50.6度までにシフトさせることができ、これまで低角度側で見られた金属膜を透過した光の影響を完全に除去でき、さらに強いSPEFも見られた。このセンサチップにより明確なSPEF画像が得られるようになった。 また昨年度から引き続き、SPR画像とSPEF画像の重ね合わせのためのプログラムの開発を行った。形状や画像サイズの異なる2つの画像の重ね合わせを実現し、SPR画像をSPEF画像に合わせる場合、SPEF画像をSPR画像に合わせる場合のいずれも自動的に行えるようにした。また両画像において同じ位置の輝度分布を求めることも可能となり本研究の目的であるSPR画像とSPEF画像のハイブリッド化を実現することができた。研究期間中に充分実施できなかった細胞の計測実験は今後も引き続き行っていく予定である。
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