研究課題/領域番号 |
19K05521
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西山 嘉男 金沢大学, 物質化学系, 助教 (40617487)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノキラル / プラズモン / 円二色性 / 非線形 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属ナノ粒子のプラズモン共鳴が発生させる、ナノキラル光電場を解析するとともに、キラル分子の分析応用への展開を目的としている。 ナノキラル電場の発生源となる金ナノ構造体(金ナノディスク)の時間応答について解析を行い、高次のプラズモンモードは双極子プラズモンに比べて顕著に長い位相緩和時間を示すことを明らかにした。(双極子モードが5fsであるのに対して四重極子モードは10fs)また、不斉が導入された場合のプラズモンの応答も高次モードではより顕著になることを見出した。 また、キラル検出の基礎として、楕円率を検出する円二色性測定の開発にも取り組んだ。この際、従来までのアクティブヘテロダイン方式(試料光と参照光が別光路)ではなく、自己ヘテロダイン方式(試料光と参照光が同一光路)に基づく測定系を構築した。その結果、測定精度と直結する干渉位相は数時間経過後も変化しないなど、安定性が飛躍的に向上し、堅牢な測定が可能となった。同時に、測定精度も向上し、その結果、数秒以内の短時間で円二色性スペクトル測定が可能となった。この円二色性測定法を、キラルな薬剤(抗がん剤の人凸であるドキソルビシン)と金属イオン(銅(II)イオン, 鉄(III)イオン)との錯生成反応の解析に適用した結果、得られたスペクトルの時間変化からどちらの金属錯体においても1:1錯生成過程が反応の律速段階であることが明らかとなり、開発した測定法の有効性が実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノキラル電場の解析の基礎となる近接場測定に関しては、フィードバック制御、振動の除去等の問題があり、当初より進展していない。これは、次年度以降に取り組む課題である。一方で、円二色性測定に関しては計画開始後に新たな測定方式を実現したことで、予想外の進展がみられた。この方式は次年度以降に予定する非線形光学測定にも適用可能である。また、非線形測定の光源となるスーパーコンティニューム光の発生には予定通り成功し、予備実験も進展している。総合すると、極微キラル分析を実現するという研究目標に対する計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
近接場測定の構築に取り組むとともに、スーパーコンティニューム光を用いたキラル非線形光学測定に取り組む。具体的には、キラルな純溶媒試料を対象として、自己ヘテロダイン方式でのキラル和周波、キラルCARS測定を実施し、測定精度の向上を図るとともに、金属ナノ構造体を導入することで、キラル測定の感度の向上を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入する試薬類、光学機器類の価格に予定との差額が生じたため。差額分は次年度に行うキラル試薬の購入に充てる予定である。
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