有機化合物で修飾した白金ナノ粒子は、酸素還元反応(ORR)の電極触媒として高活性を示す。有機化合物による修飾が触媒特性向上手法として期待されているが、その機構は明らかではない。本研究では、酸素原子を含む反応基質や触媒被毒種に着目し、修飾触媒の界面評価法を確立することで、有機表面修飾による特性向上機構を解明することを目的とした。2021年度、コロール誘導体を修飾したモデル粒子触媒を合成したが、評価中に修飾剤が脱離したため、2022年度は、電解重合により電極表面へより強固に修飾するため、アミノ基を有するコロールを新たに合成し電極を修飾した。AFM観察から修飾剤の膜厚は100~200 nmであった。修飾電極ではXPSのPt 4fピークが低結合側へシフトしたことからORR特性の向上を期待したが、電気化学活性比表面性(ECSA)が15%低下し、面積比活性が20%低下した。交流インピーダンス測定から、分極抵抗が大きくコロールが三次元的に重合し、電極表面への物質輸送抵抗が高いことが要因と分かった。酸素還元反応のモデル電極としては不適と考え、分極抵抗を低下させるため修飾剤の薄膜化を検討した。コロールとテレフタルアルデヒドを気-液界面で重合し、平均膜厚1.9 nm(2~3層)の膜を白金電極上へ転写し修飾した。電極表面の酸素濃度を基質侵入深さで評価するため、2020年度までに開発した電気化学交流インピーダンス法を適用したところ、修飾電極は未修飾電極と比較し、酸素侵入深さが浅いことが分かった。電解質(過塩素酸)濃度を0.1 Mから0.05 Mへ低下させると、未修飾電極では基質の侵入深さが浅くなるが、修飾電極では基質侵入深さが変化しなかった。有機化合物による表面修飾は物質輸送抵抗を増加するが、基質の侵入深さにおいて電解質の濃度の影響を受けにくいことが示唆された。
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