研究課題/領域番号 |
19K05523
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
服部 敏明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80198762)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カルシウムイオン / アセチルコリン / グルタミン酸 / 回収デバイス / 分解除去デバイス / イオンイメージセンサ / イオン放出デバイス |
研究実績の概要 |
研究の初年度として,カルシウムイオンを吸収する小型デバイス,および,アセチルコリンを分解する酵素を先端にもつ小型デバイスの作製し,回転機能を用いないでデバイスの評価を行った.その際に,回収・除去デバイスの評価に必要なイオンイメージセンサの開発とイオン放出デバイスも同時に開発した. カルシウムイオン回収デバイスでは,生体試料を意識して高濃度の塩化ナトリウムを含むpH 7の緩衝溶液で,数mMのカルシウムイオンの吸収を評価した.直径1mm以下のキレート樹脂一粒を先端に持つデバイスは,測定イオンイメージセンサの距離50μmほどに近づけるだけで,急激にカルシムイオン濃度を低下させるような吸収能力を持っていることが分かった.溶液中のイオン拡散のシミュレーションによれば,この濃度低下は単なるイオンの拡散では説明できないため,キレート樹脂そのものが溶液を吸い上げる能力を持つことが検証され,また,樹脂一粒でも大きなカルシウムイオン濃度減少をもたらす想定外の結果を得た.この想定外の結果は,回転などによる輸送を用いなくても生体溶液中でカルシウムイオンを回収できるもので,化学刺激方法を補助する装置において,様々な応用が期待できる. アセチルコリン分解除去デバイスでは,酵素をポリイオンコンプレックスで包埋した小型デバイスを作製し,今回は回転を用いないで評価をした.同時に,コリンよりもアセチルコリンに選択的に応答するアセチルコリンイオンイメージセンサを新たに開発し,アセチルコリン濃度の測定を行った.しかし,作製したデバイスをイオンイメージセンサに近づけただけでは,アセチルコリン濃度の低下は観測されなかった.この分解除去デバイでは,カルシウムイオン吸収デバイスとは異なり,イオンの輸送が必要であることを明らかとなり,回転ロッドデバイスの局所流速の必要性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウムイオン回収デバイスでは,それらを評価するイオンイメージセンサとイオン放出デバイスの開発とともに,予定通りに順調に進んでいる.カルシウムイオン放出する電気化学デバイスにより,カルシウムイオンの局所に徐々に放出できることを明らかにし,その放出デバイスによりツリガネムシを用いた実際の生物学の研究に応用できている. アセチルコリン除去デバイスでは,アセチルコリンを選択的に検出するイオンイメージセンサを同時に開発した.このイオンイメージセンサを用いて,アセチルコリン濃度の減少を測定できなかったが,回転機能を付与することでアセチルコリン濃度の減少が可能になると想定しており,開発上の問題ないと考えられる.さらに,同様の手法によるグルタミン酸の除去デバイスを開発する準備として,グルタミン酸イオンイメージセンサの検証とグルタミン酸放出デバイスの検証を行い,良好な結果が得られている. 一方で,当初に想定した以外に,イオン交換樹脂やキレート樹脂が一粒でも,大きなカルシウムイオンの濃度低下が見込めることが分かった.カルシウムイオンイメージセンサを用いることにより,イオン交換樹脂やキレート樹脂の動的特性評価ができることが明らかとなり,イオン交換樹脂・キレート樹脂の新規な評価方法として,学会で報告した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,回収デバイスおよび分解除去デバイスの開発と評価に用いる手法を確立した.その結果,カルシウムイオン回収デバイスの試作に成功し,また,アセチルコリン分解除去デバイスにおけるイオンの輸送が必要な課題に対して,当初のもくろみどおりで間違いがないことを確認できた.そこで今後は,アセチルコリン分解除去用に回転機能を持たせたロッドデバイスの製作し,その評価と改良を進める.また,グルタミン酸イオンについても同様な回転機能をもった回転ロッドデバイスを作製し,その評価を行う.さらに,カルシウムイオン回収デバイスも回転機能を付与したデバイスを作製し,回転デバイスの有用性と問題点を検証する.作製したいずれのデバイスも,新たな生命科学現象の解明につなげることができるか,生理学研究者の研究協力者を巻き込みながら,デバイスの作製に留まらず実用的に使えるものであるか検証を進めながら研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
1000円以下で実験に必要な消耗品を使える額でないため、次年度の繰り越しになった。、
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