タンパク質のキラルな高次構造と,その溶液中での揺らぎ,さらには周囲の溶媒分子とのキラルな溶媒和構造を直接測定することを目指し,キラリティを分子振動によって検出するラマン光学活性(Raman Optical Activity: ROA)の測定範囲を低波数領域にまで拡張し,タンパク質の低波数ROAを初めて測定した。低波数領域を測定可能な新規ROA装置を開発し,結晶構造が既知のタンパク質の測定によりピーク帰属を試みた。αヘリックス構造をとるポリペプチドのスペクトルを量子力学計算によりよく再現し,低波数ROAはαヘリックス二巻き分の長距離の相互作用と,その構造ゆらぎを反映することを明らかとした。
|