研究課題/領域番号 |
19K05526
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
武森 信暁 愛媛大学, 学術支援センター, 講師 (40533047)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トップダウン質量分析 / トップダウンプロテオミクス / ポリアクリルアミドゲル電気泳動 |
研究実績の概要 |
本研究では、SDSゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離したプロテオーム成分の高効率回収技術と超高分解能質量分析を組み合わせた新しいトップダウン質量分析法を開発し、従来法では回収困難であった高分子量域のタンパク質成分および難容性タンパク質成分を解析対象とするトップダウンプロテオミクス解析に挑戦する。今年度は下記の課題に取り組んだ。
ゲル内タンパク質回収法の開発:SDS-PAGEで分離したタンパク質をゲルから高効率に回収するための要素技術を開発した。具体的にはSDS-PAGEで分離したタンパク質成分を、固定処理を行わず直ちに水溶性CBBで染色し、受動抽出により回収した。標準タンパク質(BSA)を用いた検証実験では、界面活性剤(0.1% SDS)の使用により10分以内の迅速回収が可能であり、乾燥ゲルからの回収にも有効であった。また泳動直後のゲルであれば、界面活性剤フリーの重炭酸アンモニウム溶液でも同様の回収率が得られた。プロテオームワイドな回収効率の検証は、iTRAQ法およびSILAC法による定量プロテオミクスを用いて行った。現在までに確立した回収法では10 kDa~100 kDaでは約70%、100 kDa以上では約50%のタンパク質の溶液内回収が可能であった。
トップダウン質量分析のための試料前処理法の開発:上記の手法で回収したゲル内タンパク質試料をトップダウン質量分析で解析するための試料前処理法を開発した。具体的には、泳動用タンパク質試料の還元アルキル化条件、メタノール・クロロフォルム沈殿処理によるタンパク質精製条件、精製したタンパク質ペレットの再溶解条件の最適化をおこなった。確立した前処理条件を用いて調製した大腸菌プロテオーム分画試料の高深度トップダウンプロテオミクス解析を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ゲル内タンパク質回収法とトップダウン質量分析のための試料前処理法の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
膜プロテオーム解析のための試料前処理法の開発:難容性の膜タンパク質を対象とするメンブレントップダウンプロテオミクス解析のための試料前処理条件を確立する。膜タンパク質の溶解には、質量分析に使用可能な界面活性剤オクチルグルコシドや有機溶媒の添加により改善を試みる。
ミドルダウンプロテオミクスのための試料前処理法の開発:現状のトップダウン質量分析技術は、最新の高性能質量分析計を用いても70 kDaを超えるタンパク質の構造解析は極めて困難な状況にある。そこで70 kDa以上の高分子量タンパク質の解析に向けて、Glu-Cプロテアーゼ等による限定消化処理を用いたミドルダウン質量分析法と呼ばれる構造解析のアプローチを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月に参加を予定していた国際学会(US HUPO2020)が新型コロナウイルスの影響により中止となったため、旅費の一部を次年度に使用することにした。次年度において別の国際学会において成果発表をおこなうための旅費に使用することを計画している。
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