研究課題/領域番号 |
19K05529
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
菅原 一晴 前橋工科大学, 工学部, 教授 (30271753)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | THP-1細胞 / K562細胞 / スクリーンプリント電極 / コラーゲン膜 / 細胞培養 |
研究実績の概要 |
昨年度から細胞認識/電子伝達性ペプチドをコラーゲン膜に修飾した電極によるターゲット細胞のセンシングを進めている。ターゲット細胞であるTHP-1細胞に選択的を有する細胞認識ペプチドであるEICADPKQKWVQYYYYCを用い、細胞培地にPBSを加えリアルタイムで細胞をモニタリングするため可能性を評価した。RPMI-1640培地とPBSとの混合比をかえることで細胞が生存し電気化学的測定が可能な比率に関する知見を得ることができた。加えて、その比率を変えることで細胞の増殖をコントロールすることができ、細胞数が測定できることを明らかにした。 さらに、THP-1細胞をセンシングするために電子伝達性/細胞認識/電子伝達性ペプチドをAu thin-layer スクリーンプリント電極上に自己集積膜として修飾したデバイスを考案した。そのペプチド配列はN-、C-末端にシステイン残基を導入したCYYYY/EICADP/YYYYCであった。これは上記に述べた高い細胞認識機能を示したTHP-1細胞認識ペプチドであるEICADPKQKWVQのEICADPに注目し合成したものであった。その結果、CYYYY/EICADP/YYYYCは容易にAu thin-layer電極に修飾することができることを見出した。ペプチド修飾電極を用いてTHP-1細胞のセンシングを試みたところ100 cells/mL程度の検出が可能であった。K562細胞を2000 cells/mLの濃度で修飾と反応させても電極応答の変化は認められなかった。ネガティブコントロールとしてK562細胞を認識するペプチド配列であるCYYYY/FRPRIMTP/YYYYC固定化電極に関してもTHP-1細胞による電極応答の変化は生じなかった。それゆえ、提案した電極は新たなサイトセンシングを可能とするデバイスとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究計画として設定した「リアルタイムでの細胞センシングシステムの構築」に関しては、THP-1細胞のセンシングに適した細胞認識/電子伝達性ペプチド/コラーゲン膜修飾電極を作製しリアルタイムでの測定の実現性を探った。その結果として、RPMI-1640培地にPBSを添加する比率を制御することで細胞培養に適する条件を見つけだしている。培養条件により、細胞の増殖や増殖抑制が達成された。電子伝達性ペプチドの電極応答を測定することで細胞数が測定されその状態の把握が簡便であった。また、電極応答を示すヘキサシアノ鉄酸イオンにおける、培地とPBSの比率による酸化還元応答を確認しており培地による電極応答の抑制も合わせてモニタリングした。これらの知見は次年度に実施予定の研究計画の基礎となっている。 電子伝達性/細胞認識/電子伝達性ペプチド修飾Au thin layer電極によるターゲット細胞の検出する手法として、ペプチドの両末端にシステイン残基を導入したプローブを合成することで容易にペプチドが固定化された。ペプチドの固定化方法は非常に容易で煩雑な電極作製ステップをようしないことからも優れた電極修飾手法であるといえる。電極表面を倒立型顕微鏡で観察したところ選択的に修飾電極に濃縮されていることも確認された。現在のところTHP-1のセンシングレベルは100 cells/mL程度でありペプチド配列をCYYYYEICADPKQKWVQYYYYCにすることで感度の向上も期待できる。 上記理由に基づいて、自己点検による評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
ガラクトース認識タンパク質であるガレクチン-1およびガレクチン-3に電子伝達性ペプチドを導入したタンパク質プローブを合成しターゲット細胞のセンシングを実施する。ターゲット細胞はK562細胞、U937細胞、THP-1細胞などである。各細胞表面に存在する糖鎖末端のガラクトース残基とタンパク質プローブとの結合において生じる電子伝達性ペプチドの電極応答の変化を利用することでターゲット細胞のモニタリングが可能となると予想される。その際、タンパク質プローブの合成において、His-tagを電子伝達性ペプチドの一部に結合させ分離精製を行う。ガレクチン-1はプロト型であり細胞の分化やアポトーシスに関与し、ガレクチン-3はキメラ型となっておりマクロファージを活性化させる機能を有する。それゆえ、各ガレクチンの細胞への効果も評価する。 細胞培地にリン酸緩衝液を添加し細胞培養でき電気化学的測定も可能であること昨年度までに見出したことから、細胞培養時に細胞分化誘導剤を共存させ誘導剤の刺激による生成物の濃度を測定し分化率と比較する。そして生成物の濃度と分化率の関係から分化に必要とされる濃度を決定し、細胞分化を制御することでその反応機構についての知見を得る。例えば、Phorbol Myristate Acetate (PMA)を共存させることでヒト肺がん細胞は過酸化水素が放出されることが報告されている(Zhao et al., Biosens. Bioelectron. 41 (2013) 815-819)。一方、THP-1細胞がPMAによって分化されることも知られていることから(https://www.riken.jp/press/2009/20090420)、添加における分化プロセスをモニタリングする。
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