研究課題/領域番号 |
19K05529
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
菅原 一晴 前橋工科大学, 工学部, 教授 (30271753)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | THP-1細胞 / 光透過性スクリーンプリント電極 / 細胞培養 / 電子伝達性ペプチド |
研究実績の概要 |
電気化学的サイトセンシングを簡便で迅速に達成するために、グルコース認識タンパク質である小麦由来レクチン(Wheat germ agglutinin: WGA)とマンノースおよびグルコースと選択的に結合するタチナタマメ由来レクチン(Concanavalin A:ConA)にHis-tagペプチドに電子伝達性ペプチド(HHHHHHYYYYC)を導入したタンパク質プローブを合成した。ヒト組織球形リンパ腫由来細胞(U937細胞)と急性単球性白血病由来細胞(THP-1細胞)ターゲット細胞としたところ各細胞表面に存在するグルコース残基またはマンノース残基と先のプローブが選択的に相互作用することを明らかに。その結果、プローブに結合した際に電子伝達性ペプチドの電極応答の変化を利用することでターゲット細胞のセンシングが可能となった。 細胞培地であるRPMI-1640(L-グルタミン、フェノールレッド含有)とリン酸緩衝液を混合し24時間から72時間培養した。この培養時間において、一定の混合溶媒ではTHP-1細胞の増殖や死滅が見かけ上、ほとんど起こらない比率を見出した。その確認にあたってペプチド修飾電極によりヘキサシアノ鉄酸イオンのインピーダンス測定により100 - 1000 cells/mLの細胞を加えた場合において細胞数を見積もっており、それらの値が変化しないことから判断した。一方で、この溶媒比を選択し細胞分化剤として知られるPhorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)を用いてPMAを共存させTHP-1細胞の様子を観察したところ15%程度の分化が認められた。加えて、細胞培地に対してリン酸緩衝液の比率を大きくすると分化の割合は低下し、72時間以内にTHP-1細胞の死滅が起こることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年から令和3年度の間、本研究課題を進めるにあたり、細胞検出のために細胞認識ペプチドと電子伝達性ペプチドをグラッシーカーボン電極や光透過性スクリーンプリント電極に固定化しリアルタイムでの細胞センシングを可能としてきた。また、His-tag電子伝達性ペプチドを細胞表面の糖鎖を認識するタンパク質に修飾したタンパク質プローブを合成する研究も達成している。さらに、細胞培地/リン酸緩衝液を用い細胞の増殖を抑制しつつ、PMAによる細胞分化を行い、分化のモニタリングなどを実施してきた。全体の研究計画においては若干の遅れが生じている。 その理由としては、令和元年の末からのCovid-19の影響は受けており、研究試薬や実験器具の購入が十分にできないことにある。加えて、この時期からオンラインでの学会発表が主として行われており旅費の運用についても影響が出ている。それに伴い、研究者間の情報交換や共同研究も難しくなっている。このようなことから、予想をしていない状況として少なからず研究計画とその遂行に支障をきたしている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究期間は3年間であり、令和3年度が最終年度となっていた。しかしながら、上述のような背景から多少の研究計画の遅れが生じている。令和4年度においての研究計画としては、これまでに成果を踏まえて、スクリーンプリント金電極をベースにペプチドプローブを修飾するアプローチを発展させることを軸に研究を展開する。その取り組みとしては、THP-1細胞のセンシングに関して細胞認識/電子伝達性ペプチドプローブであるCYYYYEICADPYYYYCの有効性を明らかにしているが、CYYYYTTKTTYYYYCを電極基板に固定化してリシン残基とのペプチド結合によりEICADPYYYYCを結合させたプローブをデザインする。このような、既存のプローブに比較して細胞認識機能と電気化学的センシングに対しての感度の向上が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行するにあたり、本年度は特にCovid-19の影響により研究が規制(試薬や実験器具などの納入の遅れが生じた)された。また、国際学会であるハワイ ホノルルにおける2021 International Chemical Congress of Pacific Basin Societiesでの研究発表を予定した。残念ながら、上記の学会がオンラインで開催されることとなった。それゆえ、消耗品の購入代金が予定よりも低額となり、海外出張の旅費が支出されなかったことにより、次年度への予算の先送りが必要となった。令和4年度において、その予算は遅れている試薬や消耗品の購入に充てることとしており継続的に物品の手配を行っている。さらに、学会発表、国内学会での発表数を積極的に増やしていくことを計画している。
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