研究課題/領域番号 |
19K05532
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
矢野 和義 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (40262109)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロテオミクス / アプタマー / プラズマ重合 / 分析化学 / 薄膜 / 蛍光増強 |
研究実績の概要 |
初年度は、ナノ積層構造をガラス基板に構築し、グルタルアルデヒドなどの架橋剤を用いて、プラズマ重合膜と生体分子を共有結合させるための条件検討を行った。平成28年度~平成30年度で助成いただいた基盤研究C「ナノ積層構造を有した機能性バイオチップによる高感度バイオセンシング法の開発」(16K05824)においては、プラズマ重合を行うことにより、ナノ積層基板表面に固定化に重要なアミノ基が存在していることは示唆されたものの、期待した強い蛍光増強は観察されなかった。その課題を引き継ぎ、初年度は特にプラズマ重合膜のバイオアッセイ中の挙動変化を詳細に評価した。 その結果、アセトニトリルをモノマーとしてプラズマ重合膜を製膜した後、グルタルアルデヒド溶液で膜表面のアミノ基と共有結合をさせる際に、膜厚が低下することが、エリプソメーター及びフーリエ変換赤外分光光度法(FT-IR)により明らかとなった。これは、膜表面に未重合のモノマーや低分子量のオリゴマーネットワークが存在し、それらが基板の振とう洗浄によって洗い流されることによって引き起こされると考えられた。これにより、当初蛍光増強に最適な膜厚で製膜しても、バイオアッセイをする段階において不適切な膜厚となり、期待した蛍光増強現象が観察されなかったことが示唆された。そこで、重合時間をあらかじめ長くすることで、振とう洗浄により低下した後の膜厚が蛍光増強に適した厚さにできると考えたが、洗浄前後において再現性のある膜厚制御を行うことは困難であった。 そこで、プラズマ重合を行う際の出力に着目し、現状行っている100 Wでの重合に加え、さまざまな出力条件で、洗浄後の膜厚への影響を評価した。その結果、200 Wで重合を行ったときに洗浄後の膜厚低下が最も抑えられ、そのままバイオアッセイに供することが可能であることが明らかになった。次年度はこの重合条件でバイオアッセイを行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗体やアプタマーを用いたバイオアッセイを行うまでのプラズマ重合膜の製膜条件を詳細に検討していたため、やや遅れていると判断した。しかしこれらは今後高機能なバイオチップ創製のためには不可避な工程であり、また最適条件も見いだしたので、次年度以降遅れは十分取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、蛍光増強現象を起こすために最も重要な膜厚制御の条件を見いだし、高感度なバイオアッセイへと進む環境が整ったことから、次年度より実際に抗体やアプタマーなどの分子認識素子を用いたバイオアッセイに取り組む予定である。またグルタルアルデヒド以外の架橋剤や、アセトニトリル以外のモノマーも併せて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)試薬やプラスチック用品などの消耗品を予定より安く購入できた。
(使用計画)次年度使用額と合わせた次年度助成金で、引き続きDNAや抗体、標的タンパク質、プラスチック用品などを購入する。
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