研究課題/領域番号 |
19K05534
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
武井 史恵 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 進学課程, 准教授 (30252711)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PCR / DNA / EIS / DNA結合分子 / 炭素電極 |
研究実績の概要 |
現在、遺伝子検出法で多く使われているのは、蛍光分子とDNAの相互作用を用いた蛍光検出法である。方法としてはかなり簡便化されているが、ハード面では基本電気回路に加えて光学系一式が必要となり、現在以上の小型化が難しい。我々は、申請者の独自技術であるDNAの特殊構造に特異的に結合する“小分子リガンド”を使った遺伝子蛍光検出法を基盤とし、新たに電気化学的な手法を用いた高選択的な高感度生体分子計測法を構築することを目的とした。電気化学的手法としてインピーダンス(EIS)を用い、DNAと小分子リガンドの相互作用の変化を電気シグナルとして検出する方法の開発を目指す。開発した遺伝子検出法がDNA, RNAの定量的な検出に応用可能であることを示すため、本年度は小分子リガンドを固定化した電極の開発と基本原理の実証を行った。 金電極の場合は様々な報告があり、多くの研究者が行なっているSAM膜上への分子の固定化が一般的であるが、炭素電極の場合にはSAM膜は使用できない。そこで、炭素電極上にあるOH基に着目し、このOH基に小分子のカルボン酸誘導体を固定化することを考えた。小分子のカルボキシ基を酸塩化物に変え、エステル結合で小分子を導入した。EIS法によって抵抗値を測定すると固定化前後で抵抗値の大きさが変化し、小分子が固定化されていることが示唆された。またこの電極を使ってPCR前後の溶液中のDNAを測定したところ、PCR前の二本鎖DNAが存在しない溶液に比べ、PCR後の二本鎖DNAが存在している溶液の抵抗値の方が大きく、この方法によって二本鎖DNAの検出が可能であることが示された。さらに添加物を加えることによって、DNA抵抗値が安定することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小分子リガンドを固定化した電極の開発 本年度はまず、修飾電極の開発を行った。修飾電極を調整する際に、金電極上では、一般的には電極上の足場材として自己組織化単分子膜(SAM膜)が使われている。我々も予備実験でSAM膜にDANPを固定化した金電極を調整し、EIS法でDNAの検出を試みたが、DNAの二次構造の違いによるEISのシグナル変化が観測できた一方で、プラスのチャージを持つDANPへのDNAの非特異的な吸着も起こり、その影響が無視できないことも明らかとなった。そこで炭素電極を使うことを考えた。炭素電極上にはOH基が存在しているため、このOH基を有効に使うことができる。小分子リガンドのエステル誘導体を合成し、エステル結合で炭素電極上に結合させた。反応前と反応後のシグナルを比較すると十分な差が確認できたことから、電極上に小分子が結合していることがわかった。 続いて、この電極を使って二本鎖DNAの有無によってシグナルに変化が見られた。二本鎖DNAがない溶液に比べ存在している溶液ではシグナルが大きくなり、二本鎖DNAの検出が可能であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
EISを用いたPCR法(EIS-PCR法)の開発と定量PCRの構築 今年度の研究で二本鎖DNAの有無によってシグナルの変化が観測できたため、さらにそれを詳細に検討し、定量的な検出かが可能かを確認する。また現在は炭素電極上のOH基上に小分子を結合させているが、結合している小分子の量の検討を行うために、小分子の電極上への修飾法についても検討する。 PCR法への応用 少量の遺伝子を感度良く検出するために、現在PCRが用いられている。PCRはDNAの増幅酵素と温度コントロールによって一本のDNAを無数のDNAへと増幅する方法であり、少量の遺伝子の検出感度を格段にあげる。このPCRの進行をEIS法でモニタリングできるかを検討する。具体的にはゲル分析によってDNAが増幅されていることを確認したPCR後の溶液をEIS法で測定し、EISのシグナル変化がPCRの進行に伴う(DNAの増幅に伴う)ものであることを確認する。さらに、テンプレートの濃度を変えてEIS法を使った検出の限界を知り、感度についても検討すると同時に、PCR初期のテンプレート量とEISのシグナルに相関関係ついても調べ、定量PCRの構築を行う。また、PCRの1サイクルごとのDNAの増幅量を測定できるリアルタイムPCRのモニタリングについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助員の雇用のための経費を計上していたが、新型コロナウイルス蔓延等で人材確保が難しく、次年度に繰り越した。 次年度は人件費として使用する予定である。
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