研究課題
我々は、申請者の独自技術であるDNAの特殊構造に特異的に結合する“小分子リガンド”を使った遺伝子蛍光検出法を基盤とし、新たに電気化学的な手法を用いた高選択的な高感度生体分子計測法を構築することを目的として、一昨年から研究を始めた。電気化学的手法としてインピーダンス(EIS)を用い、DNAと小分子リガンドの相互作用の変化を電気シグナルとして検出する方法の開発を目指し、昨年は小分子リガンドを固定化した電極の開発と基本原理の実証を行った。本年度は昨年度得られた知見を基にさらに基本原理の詳細を明らかにするための実験を行なった。電極をポリビニルアルコール(PVA)を用いて被覆した電極を作成し、PCR前後の溶液において抵抗値の変化について検討したところ、非被覆状態では酵素が電極上に吸着することによる抵抗値(Rct)の緩やかな上昇が見られたが、被覆した状態では、早期にRct値が一定の値に達し、安定した測定違えられることがわかった。次に我々が今まで開発したHP-PCR法、もしくはHpro-PCR法を使った電気化学的なモニタリング法について検討した。蛍光分子DANPをPCRの緩衝液中に存在させると、DANPの量の増加に伴いRctが大きく減少した。この結果より単離しているDANPの量をPCR前後で変化させることができれば、DANPの量をモニタリングすることで、PCRの進行を観測できるのではないかと考えた。実際にDANP存在下PCRの前後の溶液を測定すると、PCRの進行に伴い、Rctが変化することがわかった。このメカニズムについての詳細についてはまだ明らかにできていないが、DANP存在下においてのPCRのモニタリングが可能であることが示唆された。
3: やや遅れている
COVID-19の蔓延に伴い、研究補助員を探すことができずに、若干の遅れが生じている。現在は研究補助員が見つかり、遅延を回復すべく取り組んでいる。
溶液中のDANPの量の変化に伴うRctの変化が観測できたことから、このメカニズムについての詳細について検討を行う。我々が以前に開発したHP-PCR法とHpro-PCR法は、PCRが進行するに伴い、遊離しているDNAPの量がそれぞれ増大する系と減少する系であり、その遊離の差を蛍光で観測している。この系中におけるDNAPの量を今度は電気化学的に効率よく測定することができれば、DNA中の一塩基の違いも観測可能と考えられる。まずはメカニズム検討後、DNA前後におけるRct変化が大きな系を選び、条件を詳細に検討して、実際に測定可能な系へと発展させる。
研究補助員を雇用する予定にしていたが、COVIT-19蔓延のため良い人材が見つからず、次年度使用とした。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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10.1007/s10620-021-06848-z
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