研究課題/領域番号 |
19K05536
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
青木 寛 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00392580)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子認識 / 核酸検出 / スイッチ機能 / 環境・バイオ診断 / バイオマーカー / 電気化学センサ |
研究実績の概要 |
本研究では、ターゲットとのハイブリッド形成に伴い信号が増加する検出原理を取り入れ、ターゲット標識化不要およびセンサ単独で検出可能という簡便性を満たす機能性核酸プローブの開発と、それを用いた高感度な核酸検出法の確立を目指す。 本年度は、昨年度開発したβ-シクロデキストリンを有するプローブDNA(βCD-DNA)に基づき、本プローブのターゲットDNAとのハイブリッド形成応答的な分子認識スイッチ機能を確認するとともに、本プローブを用いた核酸検出センシングとその動作原理の確立とを行った。βCD-DNAをフェロセン(Fc)とともに金電極表面上に固定してセンサを作製した。センサ表面の電気化学測定を行ったところ、Fcの酸化還元反応に由来する2つのピークが確認され、それらは、βCD-DNAの末端βCDと包接錯体を形成しているFc由来の酸化還元ピークP_compと錯体未形成のFc由来の酸化還元ピークP_freeであると考察した。このセンサをターゲットDNA溶液中に浸漬すると、P_free電流値が相対的に増加した(電流値比P_free/P_comp=0.815)。これは、ハイブリッド形成の結果、プローブ構造が剛直化し、電極表面のFcとの包接が解離したためと考えた。次に、尿素溶液に浸漬して一本鎖に戻すと、今度はP_free電流値が減少しP_comp電流値が増加した(電流値比=0.457)。これは、一本鎖になり柔軟な構造となったプローブが再びFcと錯形成したためと考えた。更に、ミスマッチDNA溶液中に浸漬すると、P_freeとP_compの電流値比はやはり低く0.398だった。 以上のことから、本センサはFcに由来する2つの酸化還元ピーク電流値比に基づき、配列選択的にDNAを検出できることを見出した。1つの電気化学活性種の2つ状態比に基づく核酸センサはこれまでに報告がなく、新規性が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度開発したプローブ核酸βCD-DNAに基づく、Fc存在下でのターゲットDNAの配列選択的検出に成功し、また、開発した核酸センサは、1つの電気化学活性種の2つ状態比に基づく核酸センサであり、これまでに報告がなく新規性が高いと考えられる。この成果をまとめて論文を執筆し、現在投稿中である。このようにおおむね順調に進展していると考えられることから進捗状況を区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発したセンシング原理に基づき、初年度開発したアレイ電極に基づくセンサアレイ化を進めるとともに、実試料に基づく核酸検出を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍のため、予定していた国際学会・国内学会の全てがオンライン開催となり、旅費がほとんど使用できなかった。また、所属元からの運営費交付金などの予定外の充当があった。そのため残額が生じた。来年度は最終年度であるため、研究を総括するために必要な試薬等消耗品費および人件費などに充てる予定である。
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