研究課題/領域番号 |
19K05537
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
半田 友衣子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20586599)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属-有機構造体 / イオン交換 / リン酸エステル |
研究実績の概要 |
本研究課題では、金属ー有機構造体(MOF)の均一ナノ空間と結晶構造変化を利用する高感度・高選択的測定への展開を目指して,特異的物質認識場の創出とその反応機構の解明を目的としている。2019年度までに,ランタノイドイオン(Ln3+)―リン酸エステル配位子が形成する2種類のMOFで極めて珍しい選択性の金属イオン認識が起こることを明らかにし,新たな固体材料としてもっとも身近なリン酸エステルである核酸とLn3+で配位高分子(CP)を形成することを見出した(ここでは,結晶性のあるCPをMOFとする)。2020年度はbis(4-nitrophenyl)phosphate(L1)が形成するリン酸エステルMOFでのLn3+結節点金属交換反応,および 1,4-phenylenebis(methylidyne)tetrakis(phosphonic acid)(L2)が形成するリン酸エステルMOFのナノ空間中アルカリ金属イオン(M+)の金属交換反応を詳細に調べた。また,モノヌクレオチド(mNA)とLn3+の組み合わせ,合成条件を変えてLn3+-mNA CPの合成を試みた。 L1を用いるMOFでは,重希土類に対してのみ進行する反応の温度・親MOFを構成する金属種・溶媒によって金属交換反応の選択性が変化した。特異な選択性は,2種の金属が混在する固体のエネルギー状態が大きな役割を果たしていると考えている。 L2を用いるMOFでのアルカリ金属交換の選択性は,固体の熱力学的安定性に基づく予測に反する序列であった。この系においても,2種の金属が混在する状態でのエネルギー状態が大きな役割を果たしていると考えている。 Ln3+-mNA CPの合成では,Ln3+金属のイオン半径などが高分子形成に大きく影響することが明らかとなったが,その傾向は未だ明らかではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランタノイドイオン(Ln3+)―リン酸MOFでの金属交換について様々な条件での現象を捉え,その反応特異性と反応メカニズムが明らかになりつつある。Ln3+-リン酸MOFはこれまで研究例が極めて少なく,その性質や機能について未解明なことが多かったが,Ln3+-リン酸MOFの金属イオン交換反応は,自由溶液中の反応では起こり得ない現象ばかりであることが明らかになってきた。上手く応用すれば高度な分離・分析への展開が期待できる成果が得られており,Ln3+-リン酸MOFでの特異的物質認識の解析はおおむね順調に進んでいる。 Ln3+-mNA CPでは,数種類の物質を合成したが,それらの物質を反応場とする物質認識の評価には至っておらず,進捗はやや遅れいていると判断した。特異な希土類交換選択性を生じるメカニズムの仮説を検証する実験を行い,この特異性を活用した分離または検出系への応用展開を図る。Ln3+-mNA CPでは,合成した高分子のキャラクタリゼーションとその物質認識の機能性を評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
特異な希土類交換選択性を生じるメカニズムの仮説を検証する実験を行い,この特異性を活用した分離または検出系への応用展開を図る。Ln3+-mNA CPでは,合成した高分子のキャラクタリゼーションとその物質認識の機能性を評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で学会等に係る出張費を使用しなかったため。1部の学会は2020年度に延期されたため,2020年度に使用予定であった出張費を2021年度に使用する予定である。
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