研究課題/領域番号 |
19K05538
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 瑞己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80793231)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光制御 / 抗体 |
研究実績の概要 |
本年度は光機能性抗体(以下,光ケージド抗体)分子の開発および機能評価を行った.前年度までに,不可逆型光ケージド抗体については作成が完了している.そこで本年度では可逆型ケージド抗体について開発を進めた.具体的には,まず光照射により可逆的に構造変化する光受容体タンパク質を抗体と融合した候補分子を数十種類用意した.細胞内に遺伝子導入し,光照射に伴うβ2ARへの結合を蛍光イメージングにより定量評価した.その結果,光照射に伴い細胞膜に局在するβ2ARへ光ケージド抗体が結合する様子が確認された.次に,光ケージド抗体の抗原結合能回復に伴いβ2AR活性が変化したかどうかを確認するため,リガンド刺激によるβ2AR活性化で誘導される細胞内Ca2+濃度の上昇を蛍光プローブにより評価した.まず,リガンド刺激によるβ2AR活性化で誘導される細胞内Ca2+濃度の上昇が蛍光プローブにより確認できるかを試行したところ,リガンド刺激依存的に細胞内Ca2+濃度が上昇することが確認された.次に,光照射した細胞についてリガンドで刺激したところ,細胞内Ca2+濃度は上昇しないことが明らかとなった.すなわち,光ケージド抗体の抗原結合能回復に伴いβ2AR活性が抑制された.一方で,光照射を中断したのちにリガンドで刺激した場合には,細胞内Ca2+濃度が上昇し,再びβ2AR活性が回復したことが示唆された.以上の結果より,可逆型ケージド抗体はβ2AR活性を光照射により可逆的に抑制することが明らかとなった.また一方で,別のタンパク質に対する可逆型光ケージド抗体として,内在性の転写因子p53に対する光ケージド抗体も同様に作成し,光依存的なp53不活性化を確認した.以上のように,光ケージド抗体を3種類作成し,基礎的な機能評価が完了しつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では本年度は,β2ARに対する可逆型,および不可逆型の光ケージド抗体を作成する予定であった.実際には,これらの光ケージド抗体だけではなく,p53に対する可逆型光ケージド抗体の開発にも成功しており,本課題で提案する分子設計の汎用性を示したといえる.また,可逆型光ケージド抗体は前例のない独創的な性質を有する分子であり,学術的インパクトが非常に高いと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はβ2ARに対する可逆型の光ケージド抗体,およびp53に対する可逆型光ケージド抗体を開発した.今後は,p53に対する可逆型光ケージド抗体について詳細に機能評価を行い,光応答動態を定量評価する予定である.また,p53に対する可逆型光ケージド抗体についてはマウス体内での応用を志向し,光ケージド抗体を発現する安定発現株を作成後,マウスに導入し腫瘍を形成し,マウス体内でのp53活性の光制御が可能であることを実証する生体応用研究を中心に展開する予定である.また,近赤外光による活性化についても並行して検証する予定である.
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